第7話:二人の夏休み(その19)

文字数 968文字

「おれはデートだと思ってたけど?」

水野君の突然の告白。

え?
つまりその発言の真意は、西森のことが好きだ、っていうこと?

だから、みんなにうわさされても、水野君的には『問題ない』っていうこと?

予想外の事態に、思考回路が停止してしまっている。

というか、事実を受け入れられないようだ・・・。

すると勉強会に参加している男子達が、
「おっ!
水野、とうとう西森に告白か!?」
「西森、返事聞かせてやってくれよー」
と騒ぎ始めた。

あわてて西森の方を振り返ると、
「ちっ、違っ・・・」
と混乱しすぎて、今にも泣き出しそうな顔になっている。

おれは思わず、
「ハイハイ、騒ぐのやめろ~。
おまえ達も小学生じゃないんだから、女の子困らせるようなことするんじゃないぞ」
と注意した。

自分の生徒ではない他校生にお説教してしまったので、『偉そうに』と思われたかもしれないが、男子達は、
「す・・・すいません・・・。
つい調子に乗っちゃって・・・」
と素直に謝ってくれた。

よかった、良い子達で。

続いておれは水野君の方に振り返ると、
「水野君。
君の気持ちもすっげー分かるけど、みんなの前ではやめた方がよかったかな。
西森はこういうの慣れてないから、騒がれれば騒がれるほど、逃げたくなるタイプだと思うし。
時とタイミングを見計らうのも、大事だと思うよ」
と言った。

正直、心の中では水野君に対するライバル心がメラメラと燃え上がっていたので、ちょっとお説教っぽいことを言ってしまったような気もする。

なので水野君の気持ちを害してしまったかもしれなかったが、水野君はペコリと頭を下げ、
「すみませんでした。
そうですね、おれ、西森の気持ちとか全く無視して、自分の気持ちばっかり押し付けちゃってたみたいで・・・」
と謝ってくれたので、
「いやいや、若い頃は気持ちが先走ることってよくあるよね。
おれも学生時代は暴走して、何度も失敗したことあるし」
とフォローする。

そんなおれと水野君のやり取りを見ていた涼介が、
「ハイハイ、じゃあ天体観測始めよーね。
水野君、望遠鏡はどこに設置すればいい?」
と、さりげなく話題を変えてくれたので、たすかった。

水野君も気を取り直したのか、
「あ、こっちです。
この庭でやろうと思うんですけど、星がよく見える場所はどの辺ですかね?」
と言って、涼介を庭に連れて行ったので、その場におれと西森が取り残された。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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