第8話:先生のお誕生日(その35)

文字数 709文字

ブレーキ効かなくなったら・・・

先生にそう言われ、また頬が真っ赤になり、体温がさらに1度ぐらい高くなったような気がする。

『近くに来ていい』って言ったのは自分の方なのに・・・。

緊張しすぎて、心臓がバクバク音を立てているのを、先生は知る由も無いのか、素知らぬ顔でケーキを切っている。

「苺が乗るように、上手く切るね」

先生はこんな状況でも余裕っぽそう。
きっと今まで何度もこんな経験をしてきていて、慣れているんだろうなぁ・・・

経験の無い私は、さっきから緊張してばかり。

黙っていると余計緊張しそうだったので、
「このケーキ、美味しそうですね。
どこで買ったんですか?」
と、当たり障りのない話題を振ってみた。

先生はカットしたケーキをお皿に移しながら、
「隣町のケーキ屋さん。
女子達が美味しいって言ってたから、買ってみたんだ。
同い年の女の子達が美味しいって言ってるから、夏菜の口にも合うかな、と思って」
と答える。

私のことを考えて買ってきてくれたのはうれしいけど、他の女の子達からの情報だというのを聞いて、
「先生、ほんと、女の子達と仲いいですよね」
と、ちょっと意地悪な感じで言ってしまった。

先生は「え?」と一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに余裕の表情を見せ、
「それって、ヤキモチ?」
と言って、いたずらっ子のような目をして私の顔をのぞきこんだ。

うっ・・・
また意地悪を意地悪で返されてしまった・・・。

ささいなことにヤキモチをやいてしまったのが恥ずかしくて下を向いていると、先生が、
「夏菜、ハイ、口開けて」
と言ったので、
「え?」
と驚いて顔を上げる。

すると先生が、一口大に切ったケーキをフォークに乗せ、
「どうぞ、食べて♪」
と言って、私の口元に近づけた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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