第7話:二人の夏休み(その10)

文字数 924文字

西森との食事会から家に帰ってくると、おれは携帯を取り出し、涼介に電話をかけた。

涼介とは、西森との初デートの時にプラネタリウムに招待してくれた大学時代の友達だ。

『プルルル~』

何回かの呼び出し音の後で、
「ハイ?流星、何の用だ?」
と、涼介が電話に出た。

おれは間髪を入れずに、
「涼介!頼む!
家に泊めてくれ!!」
と頼み込んだので、
「は!?
いきなり何だよ!?
急に電話してきたと思ったら、泊めてくれって!?」
と驚いた声を出した。

そりゃ、まあ、何の説明も無く、いきなり『泊めてくれ!』と言われたら、誰だって驚くよな・・・。

しかも、久しぶりの電話で・・・。

「あ、いや、ごめん、急に。
実は・・・」
と事情を説明しようとすると、
「どうせ『西森ちゃん』に関係あることだろ?
なに?またデートでもするの?」
と、全てを察したような返しをされたので、思わず『カーッ』と顔が真っ赤になってしまった。

電話で良かった。

これが面で向かい合って話をしていたら、恥ずかしすぎてこれ以上何も言えなかったかもしれない。

「う・・・、うん・・・。
その・・・、西森が8月5日に涼介が働いている『青少年自然の館』の近くの別荘で勉強合宿するから、来れないかって言われてて・・・」

モゴモゴと事の事情を説明すると、
「勉強合宿?
え?なに?
おまえ、『先生』のスキルが低いから、合宿して勉強し直さないといけないのか?」
と、変な勘違いをされたので、
「はぁ!?ちげーよ!!
誰も、おれが合宿に参加するって言ってないだろ!?
というか、失礼な!!
『先生のスキルが低い』ってどういうことだよ!!」
と否定したものの、『スキルが低い』に関して、あながちウソとも言えないところが悲しい・・・。

でも、とりあえず『スキル』の話は置いといて、
「合宿は西森が参加するんだけど、夜に抜け出してきてくれるから、一緒に星を見ようって話になったんだ。
だから、その日、待っている間だけでもいいから、涼介の家にお邪魔させてもらえたらなぁ、と思って。
おまえんち、あの付近のアパートだろ?」
と言うと、
「ええっ!?
なに、そのドラマみたいな展開の話!?
『一緒に星を見よう』って、ちょっとヤバくないか!?
それも女子高生と二人でって!!」
と、興奮気味に喰いついてきた。

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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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