第7話:二人の夏休み(その24)

文字数 806文字

水野君の背中を見つめながら、
「これで良かったんだよな・・・」
とつぶやいた。

水野君は西森に声をかけている。

すると西森はうなずいて、2人で建物の裏の方に歩いて行くのが見えた。

あ~あ・・・
こんなはずじゃなかったのに・・・。

本当なら、今夜は西森と二人で星を見ていたはずなのに・・・。

「最高の夏休み」なるつもりが「最悪の夏休み」だよ・・・。

涙が出そうになって、空を見上げて星を見る。

でも、いつの間にか真っ黒な雲が出ていて星は見えなくなっていた。

「あれ?
雨が降るなんて天気予報では言ってなかったよな?
今にも雨が降り出しそうで、まるでおれの心模様を表しているみたいじゃん・・・。」

と1人でブツブツつぶやいていると、いつの間にか隣に涼介が来ていて、
「流星、そろそろ帰るぞ。
雲行きも怪しくなってきたし、いつまでもここにいるわけにはいかないし。
と言っても、おまえには残念な結果になってしまって、ほんと申し訳ないんだけど・・・」
と、謝りながら言ったので、
「いや、もういいんだよ・・・。
おれはきっと神様に見離されたんだ・・・」
と言いつつ、座っていたベンチから腰をあげると、ポツポツと雨が降り出してきた。

「お、やばいな。
これは本格的に降り始めるかも。
みんなを早く室内に移動させようぜ」

「ほんとだ。
おい!みんな!
雨が本格的に降るかもしれないから、早く中に入って!」

おれと涼介が声をかけると、生徒達も勉強道具を抱えて急いで室内に戻っていく。

「雨が降るなんて、聞いてなかったよ!」

「ほんと最悪!
花火持ってきてたのに!」

ひとまず全員が別荘の玄関ホールに避難すると、雨脚が少し強まった。

おれがサーッと人数を数えると、西森と水野君がいないことに気づいた。

「あれ?
西森と水野君は?」

そう言った瞬間、玄関のドアが「バン!」と開いて、水野君が飛び込んできた。

水野君は息を切らしながら、
「先生、どうしよう!
西森がどこかに行って姿が見当たらないだ!」
と叫んだ。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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