第9話:風邪をひいた日の話(その19)

文字数 650文字

おれがお見舞いを断っていたがために、夏菜はおれに嫌われたのかと思って不安になっていたとは!

まさか夏菜がそう思っていたとは想像もしていなかったので、
「嫌いになるわけないだろ!?
こんなに好きなのに!
こんなに愛しているのに!!」
と言うと、夏菜は、
「な、何を言っているんですか!?」
と、びっくりあわてたような声を出した。

電話なので顔は見えないが、きっと真っ赤になっているに違いない。

おれも急に恥ずかしくなってきて、思わず黙ってしまう。

お互い、数秒黙ったままだったが、夏菜がふいに、
「・・・行っていいですか?」
と、再び聞いてきた。

「え?」

夏菜は、
「私、一度風邪をひいたから、うつりにくくなっていると思いますし、マスクもしていきますから。
先生の負担をかけないように、食べ物を持っていったら、すぐ帰ります。
だから、ほんの少しでも会いに行っていいですか?」
と言う。

え?
夢じゃないよな?

夏菜がおれに『会いたい』と言ってくれているなんて・・・

身に余るほどの『幸せ』をかみしめていると、夏菜が、
「先生?」
と心配そうな声で聞いてきたので、ハッと我に返り、
「うん、待ってる。
おれも会いたい、夏菜に」
と答えると、夏菜はうれしそうな声で、
「じゃあ、お昼過ぎに伺いますね!
何か食べ物も買って行くので、待っていてください!」
と言った。

電話を切った後、おれはゆっくり布団に倒れこんだ。

そして再び『幸せ』をかみしめる。

「知らなかった・・・。
夏菜があんなに、おれのことを『好き』でいてくれたなんて・・・」

幸せ過ぎて、再び熱が出るかも・・・。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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