第19話:教育実習生にメラメラ(その19)

文字数 801文字

塾から最寄りの駅に着いて、時刻を見ると21時を少し過ぎていた。

親には、いつものように「自習室で勉強してから帰る」と伝えているので、そんなに心配はしていないと思うけれど、ウソをついていることに対しては心が痛む。

でも、それ以上に胸が痛んでいることは、先生と中原先生の関係のことだ。

「やっぱり電車で帰ります・・・、と」

先生にメールを送信する。

せっかく迎えに来てくれていたのに、それを無視して電車で帰るなんて、先生に対して失礼だと思う。

でも、やっぱり昼間と同じく、先生と中原先生が楽しそうに話しているのを見ているのが辛かった。

そして、また逃げ出して、先生に迷惑をかけてしまった。

何回、同じことを繰り返せばいいんだろう?

私はただ、謝りたかっただけなのに、やっぱり謝れないなんて・・・。

「もうイヤだ、こんな自分・・・。
なんで、もっと素直でかわいい性格になれないんだろう?」

ずっと勉強ばかりの生活で、コミュニケーションのスキルをUPすることを怠ってしまったから、こんな残念な性格になってしまったのかな・・・。

考えれば考えるほど、自分が魅力ない人物に思えてきて、先生に好かれる理由が1つも見つからない。

電車の中で、思わず泣きそうになって、あわてて涙を隠した。



自宅最寄りの駅に着いた時、時刻は夜の21時半を過ぎていた。

いつもなら、わりとたくさんの人が一緒に電車から降りるけど、今日は2、3人と少なくて、改札を抜けると、皆急いで自宅に帰っていく。

あっという間に、駅には私一人となってしまった。

「さて、急いで帰らなきゃ・・・」

家に向かって歩き出そうとした時、
「西森!」
と、駅の横の街路樹の裏から、突然先生が現れた。

「せっ、先生!?」

え!?
どういうことなの!?
なんでここに先生がいるの!?

ビックリして固まっている私に先生は、
「なんで、急に電車で帰ったんだ!?
おれ、ずっと車で待っていたのに!」
と、泣き出しそうな顔で訴えてきた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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