第18話:教育実習生にメラメラ(その18)

文字数 1,074文字

まさかの展開に、思わず体が固まってしまう。

でも、心臓の音はよく分からないけど、ものすごいスピードでドキドキと早打ちしている。

本当は今すぐこの茂みから飛び出して行きたいけれど、行ったところでどうすることもできないし、何より先生との関係がバレてしまう。

なので、ただ茂みの中で息を殺して、2人の会話を聞いているしかない。

「もしかして、さっきからずっと車の中でいらっしゃいました?」

中原先生が恐る恐る聞くと先生は、
「ああ、ずっとここにいたけれど、まさかケンカしていたカップルが、中原先生だったとは思わなかったよ」
と答える。

すると、中原先生はかなりアタフタした様子で、
「す、すいません!
お恥ずかしい所をお見せしてしまって・・・。
教育実習に行っている期間だというのに、こんな浮ついた行動をとるなんて・・・。」
と謝ったが、先生は、
「ハハハ、おれは別に全然気にしてないですよ。
あんなケンカ、恋人同士の間ではよくあることですし、他の先生方や生徒が目撃していたわけでもないから、学校にもヒミツにしておきますし」
と笑いながら言った。

茂みに隠れているので、2人がどんな表情で話をしているのか全く分からないけれど、先生が中原先生に優しい言葉をかけているのがなんかイヤだ。

先生は確かに優しい。

カッコ悪い所もたくさんあるけれど、私がどんなひどいこと言っても、いつも優しく受け止めてくれる。

その優しさは私だけに向けてくれているのかと思っていたけれど、そうじゃなくて、中原先生に対しても優しい・・・。

それは普通のことで、別にイライラすることでもないのかもしれないけれど、さっきから胸のあたりがずっと痛くて辛い・・・。

意味不明のモヤモヤ感にイライラしていると、中原先生が、
「あの・・・
高山先生、なんでこんな所にいらっしゃるんですか?」
と、先生に聞く。

先生は少し照れたように、
「ちょっと、人を待っていてね。」
と答える。

中原先生は、
「それって・・・彼女さんとか?」
と、聞き返した。

彼女・・・

い、一応、私が、か・・・彼女らしいけれど、先生はなんて答えるんだろう・・・。

ドキドキしながら、先生の言葉を待っていると、
「うーん・・・
『彼女』とは、まだ呼べないかな・・・」
と答えた。

『彼女とは呼べない』

急に目の前が真っ暗になった。

なんで?
なんで、中原先生に「彼女」だと言ってくれないの?

もしかして先生は、私みたいな子供と付き合うのが、もうイヤになって、
中原先生の方に気持ちが移ってしまったの?

いろんな感情がごちゃ混ぜになって、耐えられなくなった私は、その場から逃げ出すように駅に向かって走り出した。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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