第8話:先生のお誕生日(その7)

文字数 1,058文字

「高山先生、再来週の土曜日、お誕生日だそうですね」

城山先生が、うれしそうに先生に話しかけている。

その様子を見て、思わず壁に姿を隠してしまった。

別に悪いことをしているわけでもないから、堂々としていればいいのに・・・。

でも、先生と城山先生が仲良くしている姿をあまり見たくなかったので、隠れたかったのかもしれない。

とはいえ、姿は隠したけれど2人の会話は聞こえてくるので、聞きたくなくても耳に入って来る。

先生が、
「あ、そっか。
再来週誕生日ってこと、すっかり忘れてました」
と言うと、城山先生は、
「私も今さっき、職員室でチラッと話を伺いまして、せっかくだから、一緒にお祝いしたいと思うんですけど、いかがですか?」
と言ったので、私は心の中で、
「えっ!?」
と叫んでしまった。

だって、城山先生は先生の彼女でもなんでもないのに、なんでお誕生日を一緒に過ごそうなんて言い出すの!?

え?え?
もしかして、城山先生は先生のことが好きなの?

それで積極的にアタックしてきているの?

どうしよう・・・
『私が先生の彼女です!』と名乗り出ることもできないし・・・。

一人焦っていると、先生が、
「あ~、すいません。
その日は、彼女と過ごす予定なんです」
と城山先生に言った。

『彼女』と過ごす予定・・・

その返答を聞いて、思わず顔がカーッと真っ赤になった。

か、彼女って、私のことだよね?

え?
でも、先生、特に何も言ってなかったけど、いつの間にかそういう予定になっていたの?

訳が分からず頭を抱えていると、城山先生が、
「彼女さん・・・いらっしゃったんですね・・・。
ごめんさない、そうとは知らず、あわててしまって、すみませんでした。」
と、残念そうな声で言った。

先生もちょっとあわてながら、
「あ、いえ、彼女の話とかあまり学校ではしないので、こちらこそすみません」
と謝っている。

私は心の中で、
「よかった・・・」
とつぶやき、ホッと胸をなでおろした。

先生がちゃんと『彼女がいる』って言ってくれたことが、なんだかうれしかった。

と、同時にホッとし過ぎて力が抜けて、思わずその場にしゃがみこんでしまった。

すると、頭上から、
「西森?」
と声がした。

「えっ!?」

あわてて上を見上げると、先生がビックリしたような顔で私の顔をのぞきこんでいた。

先生が、
「え?もしかして、さっきからずっとここにいた?」
と真っ赤になりながら聞いてきたので、私も負けないぐらい真っ赤になりながら、
「あ!?
え、えーとっ!
いや、違うんです!
スマホを確認しようと外に出たら、ちょうど先生と城山先生がいて・・・」
とあわてて答えた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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