第10話:クリスマス・デート(その19)

文字数 1,070文字

冬の夕暮れは早く、学校を出る頃には、辺りはすっかり暗くなっていた。

車に乗り込み、急いで西森を迎えに行こうとしたものの、けっこう道が混んでいてなかなか前に進まない。

「クリスマスだから、家族やカップルで外にご飯を食べに行っている人が多いからかも」

その予想通り、飲食店に入っていく車をたくさん見たので、今日は外食の人たちが多いようだ。

渋滞をなんとか脱し、待ち合わせ場所の地下駐車場に着いたのは、学校を出てからすでに20分ぐらい過ぎた頃だった。

「10分で着くと思ったのに、遅れちゃったじゃん・・・。
西森、怒っているかな・・・」

そんな不安がよぎったが、待ち合わせ場所にいた西森は笑顔でおれを迎えてくれた。

ドアを開けて助手席に座るや否や、
「先生、お待たせしてすみませんでした!
遅くなりましたけど、クリスマス一緒に過ごさせてください!」
と、西森はペコリと頭を下げるので、
「それは、こっちのセリフ。
おれの方こそ、一緒にクリスマスを過ごさせてください!」
と言って、おれもペコリと頭を下げた。

頭を上げ、お互いの顔を見合わせると、思わず『クスッ』と笑ってしまう。

西森の頭をポンポンしながら、
「塾、お疲れ様。
やっと会えて、うれしいよ」
と言うと、西森が少し頬を赤らめながら、
「さ・・・さみしかったですか?」
と聞いてきた。

「え?」

そんなこと聞かれると思わなかったので、ちょっとびっくりしたけど、おれは素直に、
「さみしかった」
と答える。

お互い、素直な気持ちを言い合うと、黙って見つめ合った。

ずっと会うのをガマンしていた衝動からか、グイッと西森の腕をつかんで引き寄せる。

「せ、先生?」

ふいに抱きしめられた西森は驚いた声を出したが、そのまま身を任せ、
「私も・・・さみしかったです・・・」
と、小さな声でささやいた。

しばらく車の中で抱き合っていたが、いつまでも駐車場にいても仕方ないので、そっと西森を離す。

改めて西森の顔を見る。

やっぱり今日もかわいい。

じっと見とれていると、急に西森は恥ずかしがって、
「な、なに、ずっと見てるんですか?
顔に何かついてます?」
と言って、プイッと顔を横にそむけた。

おれは笑いながら、
「ごめん、ごめん。
めっちゃかわいかったから、見とれてた」
と言うと、西森はますます照れているようだ。

西森は話題を変えようと、
「それより、今から先生のお家でパーティーでいいんですよね?」
と、今日の計画を聞いてきたので、おれは、
「う~ん・・・それなんだけど・・・」
と少し考え込む。

そして、
「もし、西森にまだ時間の余裕があるなら、今からドライブデートに行かない?」
と提案した。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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