第7話:二人の夏休み(その21)

文字数 768文字

水野君の『西森が好き』ともとれる突然の告白を受けて、モヤモヤした気持ちを抱えたまま、天体観測会が始まった。

勉強会の参加者は、男子5名、女子5名の計10名だ。

西森を始め、各学校の成績優秀者が集まっているため、星の説明をしても皆すぐに理解し、積極的に質問もしてくれるので、とてもスムーズに観測会は進んでいった。

ただ、うちの学校の女子が、
「高山ちゃん、夏休みなのに、デートする彼女もいないの?」
と余計なことを言ったため、他校の女子生徒達も、
「先生、彼女いないんですか?
じゃあ私、彼女に立候補しようかな~」
と冗談を言い始めた時、西森の視線が厳しかったのが超気になったのだが・・・。

そんな感じで和気あいあいと観測会をしていると、水野君がおれに近づいてきて、
「先生、ちょっと話いいですか?」
と声をかけてきた。

まさか水野君から話しかけられると思っていなかったので、
「え?おれに?」
とビックリした声が出てしまった。

え?
話って何?

西森のこと?

いやいや、なんで水野君がおれに西森のことを話すんだよ。

そうだ、きっと星についての質問だ。

だから、きっと大丈夫・・・。

と、心の中で必死に落ち着こうとしたが、心臓はバクバク音を鳴らしている。

水野君は、おれにペットボトルのお茶を渡しながら、
「今日は天体観測会、ありがとうございました。
突然言い出しちゃってすみませんでした。」
とお礼を言ってきたので、
「いやいや、おれも楽しかったよ。
いつもは学校で教科書見ながらしか教えられないから、こんなふうに実際星を見ながら話ができるのはすごく面白かったし」
と答えた。

なーんだ、やっぱり西森のことじゃなかったじゃん。

心配して損した。

ホッとしてお茶を飲み始めると、
「その・・・
先生って西森と仲いいですか?」
と急に水野君が西森の話題を振ってきたので、飲んでいたお茶を吹き出しそうになった。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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