第8話:先生のお誕生日(その8)
文字数 1,144文字
先生は辺りをキョロキョロと見回し、
「西森、こっち」
と言って、すぐ近くにあった資料室に入るようにと手招きする。
誰かに見られる気がして動揺してしまったけど、こういう時こそ、堂々としていた方がバレないのかもしれないと思って、
「何の用ですか?」
と冷静な感じで、資料室に足を踏み入れた。
とはいえ、今は昼休み中で、資料室の外でも生徒がワイワイ言いながら行き来しているので、一応先生と距離をとる。
先生も同じことを考えているのか、無理に近づいては来ないようだ。
でも、やっぱり二人きりでこんな密室にいると、心臓の音がドキドキと高鳴っている。
『心臓の音、静まって!』と思っていると、先生が、
「そのっ、いろいろゴメン!
メールした通り、クラスの女子達の話も信じないで欲しいし、城山先生とも何でもないから!」
と頭を下げて謝って来たので、あわてて、
「いえ、別に先生が悪いわけじゃないのは、分かってますから。
大丈夫です」
と答えた。
うん、ちゃんと分かってる。
クラスの女子に『軽い』と言われたことも、実際はそうじゃないことも分かっているし、城山先生とも何もないことも分かってる。
でも、何かが引っかかっていて、自分の中でモヤモヤしている・・・。
そのモヤモヤ感からか、思わず、
「そういえば、先生って再来週がお誕生日なのですか?」
と聞いてしまった。
あ、しまった!
誕生日には触れないでおこうと思っていたのに!
だって『誕生日』を知ってしまったら、無視するわけにもいかないからだ。
すると先生もあわてて、
「やっぱり、あの会話聞こえてた!?
いや、あれは、その、城山先生の誘いを断るために『彼女と過ごします』と言っただけだら、西森は気にしないで!
それに、土曜は塾があって忙しいだろうし・・・」
と言って苦笑いを見せた。
その言葉を聞いた瞬間、
『ただ断るだけの理由として「彼女と過ごします」って言っただけだったんだ』
と、納得した気持ちと、
『先生は、別に私と誕生日を過ごしたいわけじゃないんだな・・・』
という、さみしい気持ちがこみあげてきた。
確かに、先生の言う通り、土曜は午前中に塾がある。
でも、午後は塾の予定が入っていないから、予定を空けようと思えば空けることはできるんだけど・・・。
その時『キーンコーンカーンコーン』と予鈴が鳴った。
先生はあわてて時計を見ると、
「あ、やべっ!
5時間目が始まっちゃうな!
西森、急に呼び止めて悪かった。
さ、早く教室に戻って・・・」
と資料室のドアに手をかけようとした時、思わず、
「先生!」
と呼び止めて、後ろから抱き付いてしまった。
「に、西森!?」
先生がビックリして、あわてふためいている。
抱きついた私も恥ずかしくて死にそうになっていたけど、勇気を出して、
「そ、そのっ!
お誕生日、一緒に過ごしてもいいですよ!」
と言った。
「西森、こっち」
と言って、すぐ近くにあった資料室に入るようにと手招きする。
誰かに見られる気がして動揺してしまったけど、こういう時こそ、堂々としていた方がバレないのかもしれないと思って、
「何の用ですか?」
と冷静な感じで、資料室に足を踏み入れた。
とはいえ、今は昼休み中で、資料室の外でも生徒がワイワイ言いながら行き来しているので、一応先生と距離をとる。
先生も同じことを考えているのか、無理に近づいては来ないようだ。
でも、やっぱり二人きりでこんな密室にいると、心臓の音がドキドキと高鳴っている。
『心臓の音、静まって!』と思っていると、先生が、
「そのっ、いろいろゴメン!
メールした通り、クラスの女子達の話も信じないで欲しいし、城山先生とも何でもないから!」
と頭を下げて謝って来たので、あわてて、
「いえ、別に先生が悪いわけじゃないのは、分かってますから。
大丈夫です」
と答えた。
うん、ちゃんと分かってる。
クラスの女子に『軽い』と言われたことも、実際はそうじゃないことも分かっているし、城山先生とも何もないことも分かってる。
でも、何かが引っかかっていて、自分の中でモヤモヤしている・・・。
そのモヤモヤ感からか、思わず、
「そういえば、先生って再来週がお誕生日なのですか?」
と聞いてしまった。
あ、しまった!
誕生日には触れないでおこうと思っていたのに!
だって『誕生日』を知ってしまったら、無視するわけにもいかないからだ。
すると先生もあわてて、
「やっぱり、あの会話聞こえてた!?
いや、あれは、その、城山先生の誘いを断るために『彼女と過ごします』と言っただけだら、西森は気にしないで!
それに、土曜は塾があって忙しいだろうし・・・」
と言って苦笑いを見せた。
その言葉を聞いた瞬間、
『ただ断るだけの理由として「彼女と過ごします」って言っただけだったんだ』
と、納得した気持ちと、
『先生は、別に私と誕生日を過ごしたいわけじゃないんだな・・・』
という、さみしい気持ちがこみあげてきた。
確かに、先生の言う通り、土曜は午前中に塾がある。
でも、午後は塾の予定が入っていないから、予定を空けようと思えば空けることはできるんだけど・・・。
その時『キーンコーンカーンコーン』と予鈴が鳴った。
先生はあわてて時計を見ると、
「あ、やべっ!
5時間目が始まっちゃうな!
西森、急に呼び止めて悪かった。
さ、早く教室に戻って・・・」
と資料室のドアに手をかけようとした時、思わず、
「先生!」
と呼び止めて、後ろから抱き付いてしまった。
「に、西森!?」
先生がビックリして、あわてふためいている。
抱きついた私も恥ずかしくて死にそうになっていたけど、勇気を出して、
「そ、そのっ!
お誕生日、一緒に過ごしてもいいですよ!」
と言った。