第9話:風邪をひいた日の話(その7)
文字数 655文字
車内では他愛のない話をしていたが、ふと、おれは夕方にクラスの男子たちが夏菜の話をしていたことを思い出した。
何気なく、
「そういえば、掃除の時間にクラスの男子たちが、夏菜のことがかわいい、って話をしていたぞ」
と伝えると、夏菜は驚いて、
「え!どういうことですか!?
そんなわけ、無いじゃないですか!
聞き間違いでしょ!?」
と否定してきた。
おれは首を横に振り、
「いや、違う。
夏菜は自覚してないだけであって、本当にかわいいんだから、気をつけて。
他の男なんかに、絶対渡したくないぐらい、おれは夏菜のことが好きなんだから」
と言うと、夏菜は、
「なっ・・・」
と声を出すと、そのままうつむいてしまった。
信号が赤になったので、その合間に夏菜の顔を見ると、暗くてよく見えないけど、おそらく顔を真っ赤にしてうつむいているのだと思う。
「夏菜?」
声をかけると、夏菜は、
「もう・・・そんなこと言わないでください・・・」
と言う。
そしてこっちをチラッと見ると、
「『絶対渡したくない』とか『好き』とか言うの、ずるいです・・・。
恥ずかしくて、余計、熱が上がるじゃないですか・・・」
と、うるんだ瞳で見つめてきた。
「え・・・」
お互いの視線が絡み合う。
や・・・やばい・・・。
この雰囲気はやばい・・・。
熱があるから、手を出さないと決めていたのに、強い決心がすでにグラグラと揺らぎ始めてしまった。
真っ暗な車内で二人きり。
手を伸ばせば、すぐ届く距離。
思わず手を伸ばしそうになった。
が、その時、運よく信号が青に変わった。
おれは、ハッと我に返ると、再び車を走らせ始めた。
何気なく、
「そういえば、掃除の時間にクラスの男子たちが、夏菜のことがかわいい、って話をしていたぞ」
と伝えると、夏菜は驚いて、
「え!どういうことですか!?
そんなわけ、無いじゃないですか!
聞き間違いでしょ!?」
と否定してきた。
おれは首を横に振り、
「いや、違う。
夏菜は自覚してないだけであって、本当にかわいいんだから、気をつけて。
他の男なんかに、絶対渡したくないぐらい、おれは夏菜のことが好きなんだから」
と言うと、夏菜は、
「なっ・・・」
と声を出すと、そのままうつむいてしまった。
信号が赤になったので、その合間に夏菜の顔を見ると、暗くてよく見えないけど、おそらく顔を真っ赤にしてうつむいているのだと思う。
「夏菜?」
声をかけると、夏菜は、
「もう・・・そんなこと言わないでください・・・」
と言う。
そしてこっちをチラッと見ると、
「『絶対渡したくない』とか『好き』とか言うの、ずるいです・・・。
恥ずかしくて、余計、熱が上がるじゃないですか・・・」
と、うるんだ瞳で見つめてきた。
「え・・・」
お互いの視線が絡み合う。
や・・・やばい・・・。
この雰囲気はやばい・・・。
熱があるから、手を出さないと決めていたのに、強い決心がすでにグラグラと揺らぎ始めてしまった。
真っ暗な車内で二人きり。
手を伸ばせば、すぐ届く距離。
思わず手を伸ばしそうになった。
が、その時、運よく信号が青に変わった。
おれは、ハッと我に返ると、再び車を走らせ始めた。