第23話:教育実習生にメラメラ(その23)

文字数 889文字

「え?どうしたんですか?
『ごめんなさい』って、なんで急に謝っているんですか?」

「あああ~っ!!
やっぱり、全然自覚していないっ!
そんな西森に、おれは、おれは・・・」

そう言いながら、先生はチラッと私の方を見た。

「そ・・・その・・・、イヤじゃなかったのか?」

「え?イヤ?
イヤって何がですか?」

先生の言っている意味が分からず、聞き返すと、
「あああ~っ!もう!
ますます、勘違いしそうじゃん!!」
と、また意味不明のことを叫んでいる。

「ちょっと、落ち着いてください。
勘違いとか、イヤとか、一体、何を言っているんですか?
もっと分かりやすく説明してくれないと全く分からないんですけど」

と私が問いかけると、先生は、しゃがみこんでいた草むらからスクッと立ち上がった。

そして、
「その・・・
さっき思わず西森のこと抱きしめてしまったけど・・・
イヤじゃなかった?」
と聞いてきた。

「!?」

確かに分かりやすく説明してくれ、と頼んだけれど、ストレート過ぎる内容の質問だったので、私の頭の中がまた混乱し始めた。

え?
抱きしめられたことがイヤだったか、どうかって・・・。

先生に抱きしめられて私は・・・、その・・・

答えに困っていると、先生がまた質問を投げかけてきた。

「あと・・・、おれの100%の勘違いかもしれないけれど・・・。
西森、もしかしてヤキモチ焼いていた?」

「!?」

私の頭の中はとうとう「パーン!」とパンクしてしまった。

だって、先生に自分の心の中を全て見透かされてしまったような気持ちがして、恥ずかしさの余り、いつもの冷静さ、平常心が全部どこかに飛んで行ってしまったからだ。

そのせいか、
「わっ、私っ、別にヤキモチなんて、一切焼いていませんから!
そんなモチ、見たこともないですからっ!」
と、わけの分からないことを叫んでいた。

そして地面に落としていたカバンを急いで拾い上げると、
「早く帰らないと、母に怒られるので、それじゃあ!」
と言って、走ってその場から逃げ出してしまった。

「西森!」

先生が後ろから何か言っていたけれど、恥ずかしくて恥ずかしくて振り返ることもできない。

ああーっ、もうっ!
どうしたらいいのか分からないっ!
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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