第37話:トキメキ文化祭

文字数 861文字

時刻は17時半を過ぎたため、日も暮れ、辺りも薄暗くなってきた。

クラスの仕事から解放された後、執事の衣装から普段の服に着替え、4階にある理科実験室へと向かう。

ほとんどの生徒達は帰宅したか、後夜祭に行ったと思われ、校内には人影も少ない。

おれは一気に階段を駆け上がり、4階に着くと辺りを見回した。

「誰もいないようだな」

この階は、文化祭で使われていなかったので誰も来ないと思うけど、何が隠れているか分からないので、再度注意深く見回す。

誰もいないことを確認した後、ソッと実験室のドアを開けた。

「西森?」

小声で名前を呼んでみる。

何の反応も無い。

「え・・・
もしかして、来てないのか?」

急に不安になって、教室内を見回していると、
「先生、こっちです」
と言って、西森が実験室の隣に併設されている『準備室』の方からヒョコッと顔を出した。

西森の顔を見た瞬間、
「よかった・・・
来てくれてたんだ・・・」
と、ホッと胸をなでおろした。

西森は準備室に身を隠したまま、
「先生、誰がいつ来るか分からないので、手っ取り早く用事を終わらせてくださいね。
なんで、こんな所に呼んだのですか?」
と言う。

「なんでって・・・」

おれは西森の手を引っ張り、準備室の中に引き入れる。

そして準備室の鍵を閉めると、西森をギュッと抱きしめた。

突然抱きしめられた西森は、
「せ、先生!?」
と、ビックリした声を出す。

でも離したくなかったので、強く抱きしめたまま、
「文化祭、終わっちゃったけど、西森と一緒に思い出作りたかったから」
と素直な気持ちを言った。

西森はおれの腕の中で、抵抗することなくジッとしている。

何も言わないので、
『もしかして、急に抱きしめて怒らせちゃったかも?』
と少し不安になったが、西森が背中に手を回し、ギュッと抱きしめ返してきた。

「え?」

まさか抱きしめ返されると思っていなかったので、ちょっとビックリしたが、西森はそのままおれの胸に顔を埋め、ジッとしている。

二人の心臓の音がどんどん高鳴っていき、ますます離れがたくなってきた時、西森が、
「お・・・怒ってないですか?」
と言った。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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