第8話:先生のお誕生日(その25)

文字数 810文字

私はやったことがないけれど、クラスの女子達がくっつきあって、写真をスマホで写している光景は何度か見たことがある。

あの小さな画面に全員分の顔を入れないといけないので、頬がくっつきそうになるほど近づかないといけないんだろうな、とは思っていたけど、まさか自分も挑戦することになるとは・・・。

私は先生に近づきながら、
「でも、先生・・・
二人きりで写っている写真があったら、他の生徒達の写真に混ざっていたとしても、明らかに目立ちませんか?
しかも自撮りだし・・・」
と聞くと、先生は、
「確かに、目立つかもしれないけど、とりあえず写してみよう。
ダメだったら、消しても構わないし」
と言ってくる。

ううっ、自撮りをあきらめる気配は無さそうだ・・・。

ドキドキするので、先生に離れ過ぎず近すぎない微妙な距離をとって、
「こんな感じですか?」
とカメラの方を見てみた。

すると先生は、
「う~ん、顔が全部入ってないから、もうちょっと近づいて」
と言って、私の肩に手を回し、グイッと自分の方に引き寄せた。

「!?」

急に引き寄せられたので、勢い余って、先生の胸の中に体がポスッと飛び込む。

と同時に、先生がスマホの画面を見ながら顔を近づけてきた。

「あ、そうそう、いい感じでちょうど画面に入ってる」
と先生は、うれしそうに言っているが、こっちはくっつき過ぎで、ドキドキが止まらない。

先生が、
「西森、ほら笑って。
写真、写すよ」
と言うけど、緊張しすぎてそんな余裕は全く無い。

ずっと目をギュッとつぶって固まっている私に、先生が、
「緊張してる?」
と聞いたので、私はコクリとうなずいて、
「だ、だって、こんなにくっつくの、久しぶりだから・・・」
と正直に答えた。

すると先生は、カメラを持っていた腕を下ろし、私をギュッと抱きしめた。

「え?」

驚いて先生の顔を見上げると、先生はニッコリ微笑んで、
「ほんと、久しぶりだな・・・。
夏菜と、くっつくの・・・」
と言って、さらに強い力で私を抱きしめた。


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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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