第8話:先生のお誕生日(その38)

文字数 760文字

「え?」

先生に急に『好き?』と聞かれて、ビックリする。

先生は私の瞳を見つめながら、
「ほら・・・その・・・
おれはずっと夏菜に『好き』って伝えているけど、夏菜から『好き』って言われたことがないから・・・」
と言った。

先生にそう指摘され、思い返してみれば・・・

確かに面と向かって『好き』って言ったことがないような気がする。

先生は私の髪の毛をなでながら、
「正式につき合ってくれて、こうやっておれに抱きしめられても拒否するわけじゃないだろ?
だから、好きでいてくれているとは思うんだけど、今までちゃんと『好き』って言われたことがないから不安なんだ」
と言うので、
「不安?」
と聞き返すと、先生はうなずき、
「うん。
本当は好きじゃないけど、ガマンしておれに付き合ってくれているんじゃないかと思って・・・。」
と言った。

そっか・・・先生はそう思っていたんだ・・・。
私がちゃんと意思表示してなかったから、不安だったんだ・・・。

私が悲しそうな顔をしたので、先生はあせったのか、
「いや!その!
もちろん、おれの方が夏菜のことを好きな気持ちが勝っているのは、ちゃんと分かってる!
二人の好き度の割合を100%としたら、おれの好きの気持ちが99.9%で、夏菜の方が0.1%でも構わない!
0.1%でもおれのことを好きでいてくれたら、それで満足だから!」
と必死に話す。

ちがう。
ちがうよ、先生・・・
私は・・・

「先生・・・」

私は少し体を起こし、床に寝転がっている先生の顔を見降ろした。

「な・・・夏菜?」

先生は少し驚いたような顔をして、私の瞳を見つめている。

その顔が愛おしくて、誰にも渡したくないぐらい好きだから・・・

「私の気持ちが、0.1%なわけないじゃないですか・・・」

「え・・・どういう・・・」

先生が何か言おうとした言葉を遮るかのように、私は唇を先生の唇に重ねた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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