第9話:風邪をひいた日の話(その17)

文字数 762文字

夏菜からの『お見舞いに行きましょうか?』との連絡に、どう返事をするかで、悩むこと数分。

ウソをついてでも、夏菜に来てもらうか、それとも正直に『回復した』と答えて、来てもらうことをあきらめるか・・・。

しばらく考えた結果、
「やっぱり、ウソをつくのはダメだよな・・・。
正直に返事をしよう・・・」
という結論に達し、夏菜に、
『昨日、病院に行って、もらってきた薬を飲んだら、だいぶん良くなったよ。
だから心配しないで』
とメールを送った。

「これで良しと・・・」

おれは再び、布団に寝っ転がると、目を閉じた。

正しいことをしたので、何も悔やむことはない。

でも、やっぱり夏菜に会いたかった。

会って、顔を見るだけでも、きっともっと元気になれるに違いない。

「ああ・・・未練たらたらでカッコ悪い・・・」

自分のカッコ悪さに落ち込んでいると、ふいに電話の音が鳴った。

「え!?まさか!?」

あわててスマホを手に取ると、やっぱり着信相手は夏菜だ!

「もしもし!?」

勢いよく電話に出ると、夏菜が、
「先生、もう大丈夫なんですか?
声が元気そうなんですけど」
と驚いた声で聞いてきた。

しまった!
あまりにも夏菜に会いたくて、元気過ぎる声で電話に出てしまったようだ。

ちょっと恥ずかしくなったので、少し控えめな声に戻し、
「うん、だいぶん楽になったから、安心して。
心配かけて、申し訳なかった」
と答えると、
「そうでしたか、安心しました」
と、夏菜はホッとしたようだ。

おれも夏菜の声が聞けて『うれしい!』と思っていると、夏菜が、
「ご飯とかちゃんと食べてます?」
と聞いてきたので、おれはキッチンの方を見ながら、
「あー・・・
昨日、あまりのしんどさにコンビニでおにぎり買ったぐらいで、他には何も買わなかったなぁ・・・」
と何気に答えると、夏菜が、
「じゃあ、何か買って持っていきましょうか?」
と言った。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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