第9話:風邪をひいた日の話(その28)

文字数 592文字

ガマンしないといけないのに・・・

夏菜に見つめられ、一気に体温が上がっていく。
いったん引いた熱が、薬が切れて、再び上昇しているような感覚だ。

ドキンドキン、と心臓の音もどんどん高鳴っていく。

でも『心のストッパー』を外さないように、必死にガマンする。

しかし、そんなことを全く知らない夏菜は、なぜかさらに接近してくる。

夏菜はおれの手をギュッと握ると、
「今日はごめんなさい。
無理やりお見舞いに来た上に、お粥が出来るまでにも時間がかかってしまって・・・」
と謝った。

そして、ちょっと悲しげな目をして、
「私のこと・・・嫌いになりました?」
と聞く。

「え・・・」

横を振り向くと、すぐそばに夏菜の顔があった。

その顔はいつもの『優等生の顔』ではなく、完全に『恋人の顔』だ。

好きな人を見つめる『潤んだ瞳』に、ふっくら膨れた『濡れた唇』。

黙ったまま、数秒見つめ合う。

勝手な解釈だと思ったが、夏菜の赤く濡れた唇がおれを誘っているような気がして、
「嫌いになるわけないだろ・・・」
とつぶやきながら、唇に吸い寄せられた。

完全に『心のストッパー』は、またもや簡単に外れてしまったようで、止めることができない。

部屋にはおれ達二人以外誰もいない。
誰も止める人がいない。

お互い、求め合うように何度もキスを繰り返す。

二人の息遣いだけが部屋の中で響き渡っている。

何度キスしたのか分からないけど、気が付けば、夏菜を床に押し倒していた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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