第15話:トキメキ文化祭 

文字数 887文字

え?
何かおれ、怒らせる様なこと言ったっけ?

ちょっと不安になって、
「ど、どうかした?
怒ってる?
何か、おれ、まずいことでも言った?」
とビクビクしながら聞いてみると、
「いえ、別に何も怒っていません」
とサラッと西森は答える。

でも、そのサラッと感が逆になんか怖い。

ビクビクおびえていると、西森が、
「クラスの女の子達が、先生に執事の衣装を用意する、と言ってました」
と言ったので、
「う、うん?」
と答えると、西森は少し黙る。

不安になって、
「に、西森?」
と声をかけると、
「・・・じゃないですか」
と何かつぶやいた。

「え?何?
なんて言って・・・」

よく聞き取れなくて、聞き返そうとした時、西森が、
「そんな執事の格好して、女の子達にサービスしたら、先生がさらにもてるじゃないですか!」
と急に大きな声で言い返してきた。

ええっ!?
怒っているんじゃなくて、まさかの『やきもち』!?

やばい、今すぐ会いに行って抱きしめたくなった!
なんで今、電話なんだよ!!

でも、すっげーうれしい!

おれは高鳴る心臓の音を落ち着かせながら、
「やめようか?」
と言った。

「え?」

「西森が『嫌だ』って言うなら、執事になること『やめる』けど。
今なら撤回しても遅くないと思うし」

おれがそう提案すると、西森は、
「そ、それはダメです!
みんな楽しみにしてるし、一度「やる」と言ったことを投げ出すのはダメだと思います!
私一人のワガママだけで、企画を潰すのはダメです!」
と優等生らしい答えを返してくる。

うん、そういうところ大好きだ。

おれは部屋から窓の外を見る。

今日は満月のようだ。

「安心して。
おれの目には夏菜しか映っていないから。
おれが好きなのは夏菜だけだから」
と改めて告白すると、電話の向こう側の西森はしばらく、
「・・・・・・」
と黙っていたが、数秒後、
「・・・信じてますから・・・」
とつぶやいた。

そして、
「文化祭、忙しくて大変かもしれませんけど、その・・・、少しでも時間が出来たら、一緒に過ごしたいです・・・」
と西森が言ってくれた。

窓の外の夜空には、満月がいつもより増して輝いている。

うん、きっと楽しい文化祭になる。

そんなことを考えた秋の夜だった。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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