第10話:クリスマス・デート(その5)

文字数 766文字

「え?」

おれに『クリスマス、何かしたいことある?』と聞かれた西森は、ちょっと驚いたような顔をした。

そして少し『う~ん・・・』と悩むと、
「クリスマスをお祝いするのは初めてなので、何をしたいとか、何かしたい、とか全然思い浮かばないです・・・」
と答えたので、おれは、
「そっか、そうだよな!
思い浮かばないよな~」
とあわててフォローした。

そうだよな・・・
西森の性格からすると、きっとクリスマスなんて普通の1日で、お祝いすることもなく勉強ばかりだったんだろうな・・・。

そりゃ『恋人同士で過ごすクリスマス』がどんなものなのか、分かるはずがない。

それを聞いてしまったおれが悪かったと思う。

なので、
「ご、ごめんな。
難しい質問してしまって」
と謝ると、西森は首をブンブンを横に振り、
「そのっ、何がしたいかはよく分からないんですけど、先生と一緒に過ごせるだけで私は幸せですよ!」
と言った。

西森の可愛すぎる発言に驚いて、
「ええっ!?」
と思わず声が出てしまった。

まさかの『先生と一緒に過ごせるだけで幸せ』発言!!

こんなの幸せ過ぎるだろ!!

というか、そんなの初めて言われた!!

今まで何人かの彼女とクリスマスを過ごしたことがあるけど、みんな、
「プレゼントはあれが欲しい」
とか、
「おしゃれなお店で美味しいものを食べたい」
とか『要望』しか聞いたことがなかったので、西森のピュアな回答に心がキュンキュンだ。

幸せをかみしめていると、さらに西森が、
「その・・・報告しようと思ってたんですけど、クリスマスの日、両親が旅行に出かけるんです」
と言った。

「りょ、旅行!?」

初耳の情報にびっくりしていると、西森はコクリとうなずき、
「私も旅行に誘われたんですけど、勉強が忙しいからって断ったんです・・・。
なので、クリスマスの日はいつもより長く先生と一緒にいられるかも・・・です」
と言う。

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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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