第6話:二人きりの夜(その6)

文字数 588文字

「お部屋の用意が出来ましたので、案内しますね。
ベッドのお部屋で、ダブルベッドですけどよろしかったかしら?」

旅館の人からそう告げられ、おれと西森は「えっ!?」と思わず叫んでしまった。

本当の恋人同士だったら即「大丈夫です!」と返事できるけど、微妙な関係のおれ達にとっては、衝撃的過ぎる提案だ。

なので、
「いや、それは、そのー・・・」
と、明らかに動揺してしまったのだが、宿の人は、
「もし不都合なら、畳にお布団を敷くこともできますので、遠慮なく言ってくださいね」
とクスクス笑いながら言った。

あぶねーっ!!
ダブルベッドで2人で寝るハメになるのかと思ったーっ!

いや、もしそういうシチュエーションになったとしても、おれはソファの上とかで寝る予定だったけどさ。

でも、今から二人で一つの部屋に泊まる、ということを改めて考えてみたら、なんだかすごく緊張してきた。

西森の方をチラッと見てみると、西森もおれの方を見ていたため、バチッと目が合う。

西森もやっぱり緊張しているような面持ちだ。

おれは思わず、
「大丈夫だから」
と言ってしまった。

自分でも「何が大丈夫なの?」と思ってしまったが、西森からも、
「何が大丈夫なんですか?」
と言われてしまった。

ガーン・・・、呆れられてしまったかもしれない。

ショックを受けていると、宿の人が、
「それじゃあ、お部屋にご案内しますね」
と言って、おれ達を連れて宿の奥へ歩き始めた。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み