第8話:先生のお誕生日(その32)

文字数 682文字

「え⁉」

先生が顔を上げ、驚いたような顔で私を見ている。

その顔を見て、ハッと我に返る私。

恥ずかしくなって、
「な、なんでもないです!
先生が変なこと言うから、私まで変なこと言い出してしまったじゃないですか!?」
と、手を横に振り、全力で否定してみせた。

も~っ!!
バカバカ!
何言ってるのよ!?

自分から「近づいて来てくれない」って言うなんて、なんてバカなの!!

これじゃあまるで「近づいてきて欲しい」って言ってるみたいじゃない!

先生も絶対、呆れちゃったよ!

恥ずかしさやら後悔で、今すぐにでもここから逃げ出したい気持ちになっていると、先生が、
「気づいてた・・・?」
と言った。

「え?」

私がビックリして顔を上げると、先生も頬を真っ赤に染めながら、
「おれが距離をとっていたこと、気づいてたんだ・・・」
と言う。

あ・・・
やっぱり距離をとってたんだ・・・。

私は急に不安になって、
「距離をとっていたのは、嫌いになったからですか?」
と聞くと、先生は首を横に振り、
「違う!その逆!
夏菜を好き過ぎるがあまり、距離をとっていたんだ!」
と叫んだ。

好き過ぎるあまり、距離をとっていた?

最初聞いた時、どういう意味か分からず、
「え?どういうことですか?」
と、首をかしげてしまった。

すると、先生はその様子を見て、また、
「もう!
そういう何気ない行動すべてが、かわいすぎるんだよ!
夏菜がナチュラルにおれを殺しに来る!」
と、また意味不明なことを叫んでいる。

先生はまたしばらく机に顔を突っ伏していたが、チラッと私の顔を見る。

そして、
「好き過ぎて、何をしてしまうか分からなかったから、距離をとっていたんだ・・・」
と言った。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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