第43話:トキメキ文化祭 

文字数 595文字

うらやましい?

頭も良くて、カッコよくて、性格もよくて、何の欠点も無い水野君が、おれのことを「うらやましい」なんて、そんな・・・

「いや、水野君・・・」
と言葉をかけようとした時、水野君は伏せていた顔を上げ、
「なーんてね!
おれのつまらない話に付き合ってくれて、ありがとうございました!
そろそろ、帰らなきゃ。
今日は楽しかったです」
と言って、いつものさわやかな笑顔を見せた。

そして何もなかったように、玄関に向かってスタスタと歩いて行く。

が、出ていく直前におれの方に振り返り、
「先生!
西森のこと、泣かせないでくださいね。
泣かせたら、おれがすぐに奪いに行きますから」
とニコッと笑って、おれに手を振った。

きっと、そこで何も言わず黙って水野君を見送れば、おれと西森のヒミツは水野君に完全にバレずに済んだかもしれない。

水野君も、うやむやなまま流してくれたと思う。

だけど、気づけばおれは走っていて、
「水野君!」
と、呼び止めた。

水野君は、ちょっと驚いたような顔で振り返る。

おれは、手を軽く握りしめながら、
「絶対に泣かせないから、安心してくれ!」
と言ってしまった。

水野君が正直に話してくれたのに、おれだけ黙っていることがカッコ悪いように思えたからかもしれない。

後先考えていない危険な行動だったが、おれの言葉を聞いた水野君再びニコッと笑って、
「お願いしますよ!」
と言って、手を振りながら帰って行った。


★第7話 おわり★
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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