第21話:教育実習生にメラメラ(その21)

文字数 1,097文字

駅から降りてきた人たちに姿を見られないように、大きな木の裏に二人身を寄せて隠れる。

「せ、先生?」

突然、真っ暗な場所に連れていかれたので、ますます頭の中がパニックになってしまったが、
「近所の誰かに見られると、ヤバいから、ちょっとここに隠れていよう」
と先生の説明を受け、
「あ、そっか・・・」
と一応納得した。

だけど、やっぱり、こんな暗い所で、しかも至近距離で先生と一緒にいるとますますドキドキしてきて、早くここから逃げ出したい気分になってくる。

でも、なぜかこのままずっと一緒にいたい、という気持ちもわいてきて、矛盾する感情に戸惑ってしまった。

先生から香ってくるほのかな香水(?)、もしくはシャツの洗濯の香りかは分からないけれど、その匂いが私の頭の中をますますクラクラさせてくる。

思わずうっとりしていると、
「西森」
と、先生が声をかけてきた。

「は、はい!?」

急に現実に引き戻された私は、ビックリするぐらいの大きな声を出してしまった。

でも先生は驚かず冷静に、
「さっき謝ってくれた時に、『気に入らなかった』とか『イライラした』とかいう言葉が出てきたけれど、それは、何が原因だったの?」
と、聞いてきたので、私は急にドキッとして体が固まる。

「西森が謝ってくれたことは、すっごくうれしかったよ。
でも・・・、気になるんだ。
何が原因で西森がイライラしていたのかが。」

そうだった。

確かに私は先生に謝ったけれど、イライラした原因については、何一つ言っていなかったことに気づく。

でも・・・その原因を言うのは・・・

「それは・・・」

「それは?」

先生が私の顔をのぞきこむ。
それも、すごい「いたずらっ子」のような表情で。

きっと私の反応を見て楽しんでいるんだ。

私が真っ赤になって、困っている様子が、先生的には面白いんだろうなぁ。

そう思うと、ちょっと腹が立ってきたので、先生の体をグイッと向こう側に突き放して、
「先生が悪いんです!
こんなふうに、誰にでも気があるようなフラフラした態度を取るから、イライラするんです!」
と言ってやった。

先生はポカンとして、「え?」と一言。

「え?」って、本人全く自覚無し!?

ますますイライラした私は、
「私に『好き』『好き』って言っていますけど、それは他の人にも言っているんじゃないんですか!?
西原先生にも良い顔しちゃって・・・」
と思わず言ってしまった瞬間、ハッと口を押えた。

でも、時すでに遅し。

先生はビックリしたような顔で、私を見つめている。

「いや、その・・・」

今さら言い訳もできず、オロオロしていると、先生が、
「ウソだろ・・・」
と、つぶやいたかと思うと、その次の瞬間、私は先生にギュッと抱きしめられていた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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