第10話:クリスマス・デート(その2)

文字数 762文字

おれは頭を抱えながら、
「それなんですよ!
人目が気になるから、外で二人で出かけるのは難しいし。
かといって、家で過ごすのも代り映えがないかと思って、悩んでいるんです!」
と答えると、山根先生は、
「そうだろうね、おれも苦労した」
と苦笑した。

山根先生の奥さんは『元教え子』で、在学中の時から付き合っていた経験がある。

それゆえ、おれの気持ちを唯一分かってくれる人なので、
「山根先生は、どうしていました?
クリスマス、奥さんとどうやって過ごしたんですか?」
と思わず聞いてしまった。

「え?」

山根先生は、一瞬驚いたような顔をしたが、少し「うーん・・・」と悩んだ後、
「クリスマスの時は、お互い忙しくて、プレゼント交換したぐらいだったかな・・・。
卒業後に嫁に言われたけど、在学中に一緒にどこかに出かけるのが夢だったらしい」
と言った。

「一緒にどこかに出かける・・・」

それはおれも『夢』である。

西森とデートしたのは、プラネタリウムに一度行ったきりで、あれ以来、二人でどこかに出かけたことはない。

山根先生は、おれの肩をポンポンと軽く叩きながら、
「ま、外に出かけるのは、なかなかリスクが高いから難しいと思うけど、楽しく過ごせるといいな」
と言って、職員室から出て行った。

本当にそう。

デートをしたいけど、外に出かけるということは、誰かに見つかる可能性も高いゆえ、かなりリスクが高い。

誰にも見られない『場所』なんて、なかなか無いだろうし・・・。

でも、西森と『初めて過ごすクリスマス』は一生に一度しかない。

二人で忘れられないような思い出を作りたいし、作ってやりたい気持ちもウソじゃない。

「ほんと、どうしようかな・・・」

誰もいない職員室で、一人頭を抱えていると、
「失礼します」
とドアから声が聞こえたので、
「はい!?」
と、あわてて顔を上げると、西森が入口で立っていた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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