第13話:ドキドキ初デート(その13)

文字数 1,289文字

「付き合った彼女さん達、みんな大人っぽくてキレイな人だったんでしょうね」

「え?」

西森は窓の外を見つめたまま、そうつぶやいた。

「なんか、今でもよく分からないんですけど、なんで先生は私のことを好きになったんですか?
他の女の子達と比べても、全然かわいくないし、面白い会話もできないし、それに・・・」

「それに?」

「私、胸も小さいですよ」

「!?」

西森の爆弾発言に、思わずおれは急ブレーキをかけてしまった。

あぶない、あぶない!

他に車が走ってなくて、よかった!

急にブレーキをかけたため、西森は驚いて振り返る。

「先生、どうしました?」

『どうしました?』は、こっちのセリフだっ!

何をどう思って急に、「胸が小さい」発言なんかしたんだよ!?

おれは車を道の端の方に寄せ、いったん停車し、西森の方に顔を向けた。

「な、なんで突然、『胸が小さい』なんて言い出したんだ?」

西森はプイッと窓の外を向いたまま、
「だって、先生の昔の彼女さん達のことを考えたら、自分が子供っぽく思えて、胸も小さいのが気になったというか・・・」
と、ゴニョゴニョ答える。

おれは西森のあまりにも「かわいらしい考え方」にノックアウトされ、目の前のハンドルに頭をぶちつけてしまった。

その様子を見ていた西森がギョッとして、
「ちょっ、先生、何やってるんですか?」
と、心配そうに顔を近づけてきたので、そのまま首の後ろに手を回して、軽くこちらに引き寄せた。

「胸が小さいとか、子供っぽいとか、そんなこと関係ないから」

「え・・・」

おれに見つめられ、西森の頬が真っ赤になる。

やっぱり何度見ても、この表情がかわいくて、愛おしい気持ちがあふれてくる。

「おれは今こうやって、西森とデートしているだけで幸せでいっぱいなんですよ?
それに・・・」

おれは西森の頭をポンポンと軽く叩きながら、
「今はまだ、西森には(仮)で付き合ってもらっている身だろ?
その間は、決して『一線を越える』ことは無いから」
と、決意を告げた。

これはずっと考えていたことで、(仮)で付き合ってもらっている間は、ちゃんと健全な距離を保つよう努力しようと。

たまに、西森が可愛すぎて、自分で決めた線を越えそうになる時もあるが、でも、そう決意したのだ。

「だから、安心・・・」

「安心してくれ」と西森に言おうとした瞬間、
「でも、ラーメン屋さんでは、キスしようとしましたよね?」
と、過去のことをズバッと指摘をされ、「うっ」と固まってしまった。

確かに・・・
あの時は「仮」で付き合っているわけでもなかったのに、雰囲気に飲まれて、思わず迫ってしまったという前科がある。

なので、深々と頭を下げ、
「あの時は、本当に申し訳ございませんでした・・・」
と、謝った。

「でも・・・」

「でも?」

おれは西森の目を真っ直ぐ見つめ、
「今はただ、西森に本当に『好き』になってもらうことがおれの一番の目標だから!
だから、西森の嫌がることは絶対しないから!」
と、正直な気持ちをぶつけた。

「先生・・・」

西森も目を潤ませながら、おれの顔をジッと見つめてくる。

な・・・、なんだ?

まさか、西森もすでにおれのことを好きになっていて、告白をしようとしているのか?
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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