第29話:二人きりの夜(その29)
文字数 991文字
宿から外に出ると、まだ朝なのに夏の強い日差しが照り付けている。
天気は快晴で、昨日の夜の大雨がまるでウソのようだ。
「今日も暑くなりそうだな」
そうつぶやいた時、ちょうど宿の門から涼介の車が入ってくるのが見えた。
涼介はすぐ近くの駐車場に車を停めると、
「迎えに来たぞ。
無事だったか?」
と声をかけてきた。
後部座席には水野君が乗っていて、窓を開けると、
「西森、大丈夫だった?」
と聞いてきた。
おれと西森は、自然な感じで、
「ごめんごめん、心配させて。
プチ遭難をしたけど、この通り大丈夫」
と元気な様子を見せながら、車に向かう。
内心『不自然じゃないか?恋人同士になったことがバレてないか?』とドキドキしたが、こんなところでバレるわけにもいかないので、なんとかこの場を乗り切ろうと思った。
車のドアを開け、おれは涼介の隣の助手席に、西森は水野君の隣の後部座席に座る。
涼介が再びエンジンをかけ、
「とりあえず無事でよかった。
昨日『遭難した』って聞いた時は、ほんとにどうしようかと思ったんだぞ」
と言って、車を別荘に向かって走らせ始めた。
「昨日は涼介も別荘に泊ったのか?」
「ああ。
本当はアパートに帰ろうかと思ったんだけど、他の生徒の子達も心配してたし、何かあったらすぐに車で迎えに行こうかと思ってたからさ」
と、涼介とたわいない話をしながらも、おれの耳は後ろの西森と水野君の会話に集中していた。
水野君と西森は、昨日の宿泊の話ではなく、来週の塾の夏期講習の話で盛り上がっているようだ。
西森も動揺することなく普通に水野君と話をしている。
おれはホッと胸をなでおろした。
よかった~!
昨日、水野君と電話で話した時、何か勘ぐっているようなかんじだったが、それはおれの思い過ごしだったようだ。
一安心したところで、ちょうど別荘に到着した。
「夏菜、先生、無事だった?」
別荘で待っていた生徒達が、車まで駆け寄って来た。
西森は車から降りると、
「うん、大丈夫。
心配かけてごめんね」
と言って、みんなと楽しそうに話をしている。
その様子を微笑ましく見ていると、
「先生」
と水野君が声をかけてきた。
「な、なに?水野君。
どうかした?」
このまま何事も無く帰れると思っていたのに、水野君に呼び止められるなんて・・・。
何かとても嫌な予感がする・・・。
水野君はおれを端の方に連れて行き、ボソッと小さな声で、
「西森の好きな人って、先生じゃないですか?」
と言った。
天気は快晴で、昨日の夜の大雨がまるでウソのようだ。
「今日も暑くなりそうだな」
そうつぶやいた時、ちょうど宿の門から涼介の車が入ってくるのが見えた。
涼介はすぐ近くの駐車場に車を停めると、
「迎えに来たぞ。
無事だったか?」
と声をかけてきた。
後部座席には水野君が乗っていて、窓を開けると、
「西森、大丈夫だった?」
と聞いてきた。
おれと西森は、自然な感じで、
「ごめんごめん、心配させて。
プチ遭難をしたけど、この通り大丈夫」
と元気な様子を見せながら、車に向かう。
内心『不自然じゃないか?恋人同士になったことがバレてないか?』とドキドキしたが、こんなところでバレるわけにもいかないので、なんとかこの場を乗り切ろうと思った。
車のドアを開け、おれは涼介の隣の助手席に、西森は水野君の隣の後部座席に座る。
涼介が再びエンジンをかけ、
「とりあえず無事でよかった。
昨日『遭難した』って聞いた時は、ほんとにどうしようかと思ったんだぞ」
と言って、車を別荘に向かって走らせ始めた。
「昨日は涼介も別荘に泊ったのか?」
「ああ。
本当はアパートに帰ろうかと思ったんだけど、他の生徒の子達も心配してたし、何かあったらすぐに車で迎えに行こうかと思ってたからさ」
と、涼介とたわいない話をしながらも、おれの耳は後ろの西森と水野君の会話に集中していた。
水野君と西森は、昨日の宿泊の話ではなく、来週の塾の夏期講習の話で盛り上がっているようだ。
西森も動揺することなく普通に水野君と話をしている。
おれはホッと胸をなでおろした。
よかった~!
昨日、水野君と電話で話した時、何か勘ぐっているようなかんじだったが、それはおれの思い過ごしだったようだ。
一安心したところで、ちょうど別荘に到着した。
「夏菜、先生、無事だった?」
別荘で待っていた生徒達が、車まで駆け寄って来た。
西森は車から降りると、
「うん、大丈夫。
心配かけてごめんね」
と言って、みんなと楽しそうに話をしている。
その様子を微笑ましく見ていると、
「先生」
と水野君が声をかけてきた。
「な、なに?水野君。
どうかした?」
このまま何事も無く帰れると思っていたのに、水野君に呼び止められるなんて・・・。
何かとても嫌な予感がする・・・。
水野君はおれを端の方に連れて行き、ボソッと小さな声で、
「西森の好きな人って、先生じゃないですか?」
と言った。