第4話:教育実習生にメラメラ(その4)

文字数 1,699文字

「はあ・・・
ストラップは子供っぽすぎたかな・・・」

特に行く当てもなく、ブラブラと廊下を1人歩く。

学校で携帯を取り出すことはめったに無いけど、おそろいのストラップを付けているのを誰かに見られたら・・・。

「ストラップ、外した方がいいかも・・・」

そんなことを考えていると、急に後ろから「西森!」と名前を呼ばれた。

この声は・・・

振り返ると、そこには理科室から手を振って私を呼んでいる先生が立っていた。

「ちょうど、よかったー!
こっち、こっち!」

こ・・・この人は・・・。

たった今、『先生が生徒と付き合っているかもしれない』と女子達にうわさされているのも知らずに、学校でこんなに堂々と私を呼ぶなんて・・・。

しかも、めちゃくちゃうれしそうに・・・。

私と付き合っていることがバレたら一番困るのは自分だってことが分からないのだろうか・・・。

「な・・・、なんですか・・・」

周りに誰か他の人がいないか、警戒しながら先生に近づいていく。

すると先生はうれしそうに、
「今、ちょうど今度の授業で使う資料を作っていたから一緒に手伝ってくれないか?」
と言って、理科室の机の上に大量に並べていてる資料を私に見せた。

何も考えてないのん気そうな顔を見ると、思わず、
「イヤです」
と言ってしまった。

もちろん、本当にイヤなわけではないけど、なんか素直にかわいく「お手伝いします♪」なんて言えない。

ほんと、かわいくない性格。

すると先生の顔は、みるみる悲しそうな表情に変わっていく。

「そ・・・そうか・・・。
ごめん・・・。
でも、こんな時ぐらいしか西森と一緒にいられないから・・・」

もーっ!

本当にこの人は、ストレートに自分の気持ちを言い過ぎなのよ!

いっつも、いっつも、いつも!

毎回呆れさせられるけど、でも・・・

「分かりました。
手伝いますから、泣かないでください」

なんか、放っておけない気持ちにさせられてしまう。

それに、よく分からないけど、ちょっとだけ一緒にいたい気持ちにもなってくる。

私が手伝うことを承諾すると、先生はパーッと目を輝かして、
「本当か!やったーっ!
じゃあ、どうぞ、どうぞ♪」
と言って、理科室の中に私を案内した。

私が部屋に入ったところで、
「どうする?鍵を閉める?
カーテンも全部しめて、外から見えないようにする?」
と、変なことを言ってきたので、私はあわてて、
「鍵閉めて、カーテンもしめるって、何する気ですか!?」
と言うと、
「いや、別に何もしないけど、誰かに見られたら、マズいかなと思って・・・。」
と答えた。

「鍵閉めて、カーテンしめて、その中に二人でいる方が変ですから!
こういう時は、普通にしているのが一番いいんです!
そんなのも分からないんですか!?」

私に注意され、先生はガックリを肩を落とし、

「は・・・はい・・・」
と反省したようだ。

本当にこの人は・・・。

鍵を閉めて、カーテンを全部しめて、密室の中に二人きりで資料作りなんて、考えただけでも、心臓に悪過ぎる。

誰かに見られるのも怖いけど、また・・・
急に抱きしめられたり、迫られたりしたら、ドキドキしすぎて、午後からの授業が完全に上の空状態になってしまいそうで・・・。

今だってこうやって先生の隣で、資料を作っているだけでも、その距離が近すぎて、心臓がドキドキしているのに。

「西森」

「なんですか?」

「本当にこれでいいのか?
理科室のドアは開けっ放しで、二人で真正面向いて、真面目に資料作りをしているだけで」

「当然です。
これだったら、誰が見ても私は先生の資料作りの手伝いをしている生徒にしか見えませんから」

「そっか・・・」

隣で「はあ・・・」とため息をついている先生を見ていると、「え?本当は何がしたかったの?」という気持ちになったきた。

まさか、本気で学校で手をつないだりしたかったのだろうか・・・。

もーっ!
本当にのん気なんだから!

ただでさえ、生徒達に「彼女ができたかも」と怪しがられているんだから、もう少し危機感を持って生活をすべきなのに!

なので私は、
「この前プレゼントしたストラップ、今すぐスマホから外してください」
と言ってしまった。

すると先生はめちゃくちゃ驚いた顔をして、
「はあああああ!?」
と叫んだ。

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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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