第3話:苦手な優等生(その3)

文字数 855文字

高山 流星 25歳

ここ県立二宮高校で 地学教師をやっています。

趣味である天体観測を 活かせる仕事をやりたくて、 教師になったわけですが、 世の中、楽な仕事なんて無かったわけでして・・・

キーンコーンカーンコーン

さわやかな風が吹く5月某日の 5時間目、 おれは2年5組の授業を担当していた。

文系のクラスで地学を選択している生徒達相手に 今日も「宇宙」の話などを 自分なりに一生懸命教えている最中だ。

「ハイ、じゃあ ここまでで何か質問あるか?」

「ハイハイハーイ!
高山先生は、彼女いるんですか?」

「今度の日曜日は空いていますか?」

「年下の女子は恋愛対象外ですか?」

最前列に並んでいた女子生徒達から 全く地学とは関係のない質問が飛んできた。

「おい、今は授業中なんだぞ。 地学に関する質問だけにしてくれ。」

ちょっと怒った口調で言ってみたが、女子達の勢いは止まらない。

「えーっ!だって気になるしー!」

「先生がかっこよすぎて授業が頭に入ってこないんです!
彼女いるのか、ほんとに気になるーっ」

と、授業無視でそのままワイワイと騒ぎ始めた。

すると今度は女子の後ろに座っている男子達が、ブツブツ文句を言い始める。

「ちっ、高山め!
また女子の気を引こうとしやがって、ムカつくんだよ」

「おっさんなんだから、高校生に手を出すなよな!」

そんなつぶやきを耳にして、おれは心の中で叫んだ。

あーっ!もう!
ほんとに、勘弁してくれ!

女子には「同級生」のように扱われ、男子には完全に嫌われ、今日も授業がグダグダだ!

また隣のクラスの先生達から「うるさい!」って、おれのところに「苦情」が来るんだよ!

怒りが爆発しようとしたその時だ。

「ダン!」と激しく机を叩く音が教室に響き渡った。

あれだけ騒いでいた生徒たちが一斉に静まり返る。

皆の視線は真ん中付近の席に座っている女子生徒に向けられた。

その女子生徒とは・・・

「みんな、授業中だって言ってるでしょ?
騒いだら、この前みたいに 体育館の掃除をさせられるわよ」

西森 夏菜、
クラス一の優等生だ。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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