第8話:先生のお誕生日(その15)

文字数 964文字

『先生のお誕生日を一緒に過ごす』という約束を交わしてから、私は毎日「誕生日プレゼントを何にするか」で頭を悩ませていた。

いくつか候補は出たけど、いまいちピンとくるプレゼントが思い浮かばない・・・。

そもそも『お誕生日会』というものを、ほとんど経験したことがない私にとって、プレゼント選びは難問過ぎると思う・・・。

でも、いくつかの案は出たのだ。

まず思いついたのは「ハンカチ」。
でも、もらってうれしいかというと、なんか微妙な気がする。

「ネクタイ」案も出してみた。
でも先生、いつもTシャツ着ていて、スーツ姿をほとんど見たことが無いので、プレゼントしても使う機会が無さそうだ。

「美味しいお菓子」とか食べ物系も考えてみたけど、食べてしまうと何も残らないのがさみしいような気がした。
せっかくの「お祝い」だから、思い出として形に残ってくれるものにしたい。

そんなことを考えていると、全く何も決まらず、気づけば、誕生日3日前になっていた。

「はあああ・・・。
本気でやばい・・・・」

先生の授業を受けながら、思わず深いため息をついてしまった。

先生はそんな私の気持ちを知るよしもなく、いつも通りに授業を進めている。

気づかれないように、チラッと先生の顔を見た。

なんだろ・・・最近ちょっとさらにかっこよくなった?
そういえば、昨日も1年の女の子達に囲まれて、キャーキャー騒がれてたし・・・。

「浮気はしない!」って言ってる言葉は信じているけど、やっぱりかわいい女の子達に囲まれている姿を見ると不安になってくる。

だから、素敵なプレゼントを送って、それを見るたびに私のことを思い出してくれたら、うれしいのになぁ・・・。

その時、
『キーンコーンカーンコーン』
と、授業終了の鐘が鳴った。

先生は教科書を閉じると、
「じゃあ、今日はここまで。
来週からは、次の章に入って行くから予習しておけよ」
と言って、教室を出て行った。

「終わっちゃった・・・」

先生の授業が終わり、なんか『さみしさ』を感じる。
もっと、一緒にいれたら、うれしいのに・・・。

と思ったけど、誕生日はずっと一緒にいられるわけだから、落ち込んでいる場合ではないのだ!

「黒板消さなきゃ」

今日が日直だったことを思い出し、席を立ち黒板に向かう。

すると、教師用の机の上にボールペンが忘れられていることに気づいた。

「これ・・・先生の?」
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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