第16話:教育実習生にメラメラ(その16)

文字数 958文字

まさか、今から車で来るなて・・・。

どうしてあの人は、いつもいつも予想の斜め上を走ってくるから、オロオロされっぱなしで、ほんと迷惑!

迷惑だけど・・・
でも、先生が迎えに来てくれることを、ちょっとうれしく感じている自分もいた。

「今度こそ、ちゃんと謝らなきゃ・・・」

待っている間、謝る練習を繰り返す。

『ごめんなさい』だけじゃ、意味が分からない?

『先生と中原先生が仲良くしていたのが気に入らなくて、イライラしていてごめんなさい』じゃ、なんだか私が「ヤキモチ」を焼いているみたいで、絶対言いたくない。

言いたくないけど・・・

「ヤキモチ焼いてたのかな・・・」

なんだかいろいろ考えていると、自分の気持ちがよく分からなくなって、頭がクラクラしてきた。

勉強の問題なら、解答が「これ!」と決まっているので、こんなふうに振り回されることもないけれど、先生のことになると何が正しい答えなのか分からなくて、心の中がずっとモヤモヤしている。

それがスッキリしなくてストレスになるのだけど、たまに今まで感じたことがないような不思議な高揚感(?)を感じる時もある。

模試で良い点を採った時以上の、何か・・・不思議な気持ちが・・・。

と、いろいろなことを考えていると、突然携帯が鳴った。

「はっ、ハイ!?」

緊張していたせいか、少し声が裏返ってしまった。

「西森、今、塾の近くに来たけど、どこにいる?」

先生の声に、なぜかホッと安心する。

「今、塾の前です。
でも、塾の前だと人通りも多いので、ちょっと離れたところで待っていて下さい。
そうですね・・・えーと・・・」

私は近くにあった『地図』を見て、
「ここから西に少し入ったところに、児童公園があるので、その付近でどうでしょうか?」
と言うと、
「分かった。
じゃ、そこで待っているよ」
と先生はうれしそうに言って電話を切った。

私も電話を切って、急いで公園に向かう。

心臓の音がどんどん高鳴っていく。

先生の車に乗るのは、これで2回目だ。
でも、前回と違うのは、今が夜だってこと。

プラネタリウムを観に行った時は、お昼で辺りは明るくて、それほど緊張もしなったけど、今日は夜で、辺りは暗くて・・・。

「どうしよう・・・
心臓がドキドキしすぎて、なんか死にそう・・・」

死ぬわけないのに、そんなことを考えてしまうぐらい、今、私は緊張している様子だった。

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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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