第9話:風邪をひいた日の話(その12)

文字数 752文字

風邪気味だった西森とキスしてから数日が過ぎた。

西森はおれに風邪がうつるのを心配していたが、熱が出ることも咳が出ることもなかったので、普通に毎日を過ごしていた。

だが、金曜の午後、急に悪寒がし始め、机に入れていた体温計で熱を計ってみると・・・

「37.5℃・・・」

ちょっと熱が出てる!?

体温計を握りしめ、茫然としていると、
「なに、熱が出たのか?」
と、後ろから山根先生が声をかけてきた。

おれはあわてながら、
「いや、熱といっても微熱だから大丈夫です」
と答えると、山根先生は眉をしかめつつ、
「確かに今は微熱かもしれないけど、この後、急に上がる可能性もあるから、甘く見ない方がいいぞ」
と言う。

確かに・・・
微熱で終わってくれればいいけど、悪化させてこじらせたら、学校を休むことになって迷惑をかけること間違い無し、だ。

山根先生が、
「まだあと6時間目があるけど、高山は授業が入っているのか?」
と聞いてきたので、おれは首を振り、
「いえ、今日はもう授業は無いです」
と答えると、山根先生は、
「じゃあ、できるだけ早く帰って、病院に行った方がいいかもな。
今日行けなかったら、明日の朝一でもいいから。
悪化を防ぐためにも行った方がいいと思うぞ」
とアドバイスをくれた。

おれもうなずき、
「そうですね、無理しないようにします・・・」
と素直に従う。

西森とキスしてから、数日たっているので『風邪がうつった』ということは考えにくく、どこか別のところで風邪菌をもらった可能性が高い。

でも、西森に『風邪をひいた』と話すと、絶対『自分がうつした』と思って心配をかけると思ったので、黙っておくことにしよう。

土日、安静にしていたら月曜には治るだろう。

そう思って、放課後に急ぎの仕事だけを片付け、帰ろうとした時、スマホから音が鳴った。

送信相手を見ると西森だった。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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