第8話:苦手な優等生(その8)

文字数 722文字

そんな静寂を破って先に口を開いたのは西森だった。

「先生、なんでこんな所にいるんですか?」

「それはおれのセリフだ!
おまえこそ、なんでここにいるんだ!」

いろいろ言いたいことはあるが順を追って話をすることにした。

「おれがここにいるのは、ここが帰り道だからだ。」

「え?家、この近くなんですか? 」

「ああ、100mぐらい先にあるマンションだけど 」

「じゃあ、うちの近所じゃないですか! 」

「何!?西森もこの近くに住んでいたのか! 」

まさかの「ご近所さん」ということが発覚し、つい和んでしまったが、違う。
おれが聞きたいことはそんなことではない。

「じゃなくて西森、 こんな時間に1人で何をやっているんだ?
この公園、たまに不審者が出るってウワサになっているだろ?
女の子1人でいるなんて、危ないぞ 」

ちょっと怒った口調で言ってやった。

別に昼間の説教の仕返しではなく、心の底から心配していたからだ。

だが、西森はふら~っとベンチから立ち上がって
「ちょっと気分転換です 」
と言って、おれに背を向けた。

今、西森がどんな表情をしているのかおれには分からない。

でも、昼間の強気な雰囲気ではない。

今まで見たことのない様子におれはちょっと動揺した。

西森はフラフラと歩きながら、
「もう少し気分転換していますから、
先生、先に帰っていいですよ」
と言った。

このバカ!
こんなところに放置して帰れるわけないだろ!

手を握るのはさすがにやばかったので、西森のカバンをつかんだ。

「ほら、家まで送ってやるから帰るぞ !」

そう言って、カバンを引っ張り強引に連れて帰ろうとした。

が、西森が反抗してカバンを引っ張り返す。

「イヤです!帰りたくないんです! 」

はあ!?
帰りたくないって、どういうことだよ!
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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