第9話:苦手な優等生(その9)
文字数 896文字
「家に帰りたくない」と言い張る西森におれは困惑した。
とりあえず、落ち着こう。
帰りたくないわけには、 何か理由がきっとあるはずだ。
「何があったんだ?
無理に話せとは言わないけど、 おれに話してもいいことだったら聞いてやるぞ 」
そう言ってベンチに座った。
西森は相変わらずおれに背を向けたまま、黙っている。
2人の間に、少し冷たい夜風が吹いた。
「・・・・・・」
お互い、無言状態が続く。
やっぱりおれじゃダメなのか・・・。
ベテラン教師だったら、 もっと上手く対処できたかもしれないが、 おれにはそこまでのスキルは無くて、 自分の未熟さにため息をついた。
が、その時だ。
「私・・・期待に応えられなかったんです 」
「期待?」
西森がコクリとうなずいた。
「はい。
塾の模試で絶対1位を取るって親と約束していたのに、 取れなかったんです 。 」
その話を聞いて、おれは昼間の女子達の会話を思い出した。
西森は高校受験の失敗を未だに悔やんでいて、大学こそは志望校に入るために今勉強をがんばっているのだと。
それは「自分のため」でもあり、教育に熱心な「親のため」でもあるってことを。
あまりにもしょげている西森の背中を見ていると、なんとかしてやりたい気持ちが自分の中に湧いてきた。
でも、こんなヘタレ教師に励まされても西森はちっともうれしくないだろう。
逆に「バカにしてるの?」と一喝されそうだ。
だが、負けるわけにはいかない。
生徒が悩んでいるんだから、少しでも力になってやるのが教師だろ!
おれは勇気を出して言った。
「西森、まだ帰りたくないのか? 」
「え? 」
ずっとおれに背を向けていた西森が、反応して振り返る。
「じゃあ、うちに来ないか? 」
思わずそんな言葉が出た。
というのも、おれにはとっておきの策があるのだ。
家に帰れば、西森を喜ばせることができる素敵なモノがあるのだ!
だが・・・
「家って・・・、先生の家に行ってどうするんですか?」
西森は、眉間にシワを寄せて疑い深そうな顔をしている。
その顔を見て、ハッと我に返った。
おれのバカーっ!
前置きなく「うちに来ないか?」なんて 先生として有りえない発言だろーっ!
とりあえず、落ち着こう。
帰りたくないわけには、 何か理由がきっとあるはずだ。
「何があったんだ?
無理に話せとは言わないけど、 おれに話してもいいことだったら聞いてやるぞ 」
そう言ってベンチに座った。
西森は相変わらずおれに背を向けたまま、黙っている。
2人の間に、少し冷たい夜風が吹いた。
「・・・・・・」
お互い、無言状態が続く。
やっぱりおれじゃダメなのか・・・。
ベテラン教師だったら、 もっと上手く対処できたかもしれないが、 おれにはそこまでのスキルは無くて、 自分の未熟さにため息をついた。
が、その時だ。
「私・・・期待に応えられなかったんです 」
「期待?」
西森がコクリとうなずいた。
「はい。
塾の模試で絶対1位を取るって親と約束していたのに、 取れなかったんです 。 」
その話を聞いて、おれは昼間の女子達の会話を思い出した。
西森は高校受験の失敗を未だに悔やんでいて、大学こそは志望校に入るために今勉強をがんばっているのだと。
それは「自分のため」でもあり、教育に熱心な「親のため」でもあるってことを。
あまりにもしょげている西森の背中を見ていると、なんとかしてやりたい気持ちが自分の中に湧いてきた。
でも、こんなヘタレ教師に励まされても西森はちっともうれしくないだろう。
逆に「バカにしてるの?」と一喝されそうだ。
だが、負けるわけにはいかない。
生徒が悩んでいるんだから、少しでも力になってやるのが教師だろ!
おれは勇気を出して言った。
「西森、まだ帰りたくないのか? 」
「え? 」
ずっとおれに背を向けていた西森が、反応して振り返る。
「じゃあ、うちに来ないか? 」
思わずそんな言葉が出た。
というのも、おれにはとっておきの策があるのだ。
家に帰れば、西森を喜ばせることができる素敵なモノがあるのだ!
だが・・・
「家って・・・、先生の家に行ってどうするんですか?」
西森は、眉間にシワを寄せて疑い深そうな顔をしている。
その顔を見て、ハッと我に返った。
おれのバカーっ!
前置きなく「うちに来ないか?」なんて 先生として有りえない発言だろーっ!