第14話:気になる気持ち(その14)
文字数 1,780文字
「そうですか、苦手だったんですね。
確かに私も、先生に意地悪し過ぎていた気はします」
フフフ・・・
やっぱり意地悪されていたんだな、と改めて思い知らされてしまった。
でも、今はそんなことはどうでもいい。
「そうだよ、西森が意地悪・・・というか、おれのダメなところを的確に指摘してくるのが、『さすが優等生』という感じで近づきにくかったし、いつも無表情か怒った顔しか見たことがなかったから、本当に苦手だったんだ。
でも・・・」
「でも?」
「あの夜、公園で出会って、学校では話さないような話をした時、西森が初めて見せた笑顔や照れ顔が本当に可愛くて、忘れられなくなって・・・」
おれは顔を上げて、西森の顔を真っ直ぐ見ながら、
「それから、おまえのことしか見えなくなってしまったんだ!」
と、正直な気持ちを叫んだ。
「!?」
先ほどまで冷静に話を聞いていた西森が、『おまえのことしか見えなくなってしまったんだ!』発言を受け、再び頬を真っ赤にしてびっくりしている。
困らせているのは分かっているけど、これがおれの正直な気持ちだから仕方がない。
言ってしまったから仕方ない!
半分『やりきった感』と、半分『やってしまった感』がおれの心の中でグルグル交差する。
『どうしよう、どうしよう!?』と思っていると、突然西森が、
「そんなの、ウソです!」
と言い出した。
「ハ!?ウソ!?」
びっくりするおれに、西森はキッとにらんでくる。
「だって先生、あの夜の次の日から、私のことをさらに怖がって、近づいても来ないし、話しかけても来ないし。おまけに、他の女の子達と仲良さそうに話ばっかりしていて、私のことなんて完全に無視してたじゃないですか!」
その言葉を聞いて、おれはさらにびっくりする。
「いやいやいや、無視していたのは西森の方だろ!?
授業中、ずっとおれをにらんでいるし、おれがミスをしても、一切突っ込んでもこなくなったし!
あの時、おれがどれだけ西森のことで、心かき乱されていたのか全然知らないだろ!」
そこまで言うと、壊れかかっていた気持ちの『ストッパー』が、完全に「パーン!」と壊れてしまったようで、言葉を選びながら話す余裕などなくなっていた。
「おれと西森は『教師と先生』という立場で、教頭先生からも「女子生徒に手を出すな」と釘を刺されていたから、何度も何度も西森のことを忘れようと思ったよ!
でも、忘れようとしていた時に、またこうやって出会って、一緒の時間を過ごしていたら、もっともっとおまえのことを好きになってしまったんだ!」
『西森のことが好きだ!』
それがおれのストレートな気持ちだった。
もう隠すこともできなかったし、隠しきれなかったから、言葉に出してしまった。
しかし、『好きだ』と伝えられた西森は、驚きの余り固まってしまっている。
そりゃ突然、学校の先生から『好きだ!』と言われて、困惑しない生徒はいないだろう。
困りきっている表情の西森を見ていると、『やっぱり伝えるべきではなかった』という後悔の念が押し寄せてきた。
これで西森の成績が落ちてしまったら、完全におれのせいだ・・・。
ああっ、もうっ!
この後悔とバカなやり取り、何回さっきから繰り返しているんだよ!
そんなことを考えていると、
「本当に先生は、私のことが好きなんですか・・・?」
と西森がポツリとつぶやいた。
「え?」
まさか、西森からそんなことを聞かれると思わなかったので、一瞬うろたえてしまったが、真剣な目でおれを見つめる西森を見ていたら、自然と言葉は出ていた。
「好きだよ。
優等生の西森も、照れた顔の西森も、笑顔がかわいすぎる西森も、全部ひっくるめて好きだよ」
西森は真っ赤になってうつむくと、急におれのシャツをギュッと握りしめてきた。
「に・・・西森?」
この反応は、どう解釈したらいいんだ?
『Yes』なのか『No』なのか?
緊張が高まって、頭がクラクラする。
お互いの様子をうかがっているような状況が、1分ぐらい続いた後に、西森が口を開いた。
「先生は私のことを『好きだ』と言ってくれましたが、
私は・・・、私のこの気持ちは、何なのか分からないんです・・・」
西森はグッと顔を上げ、こう言った。
「だって、こんなこと、教科書や参考書に一切書かれてなかったから、どう解いていいか分からないんです!」
教科書や参考書に一切書かれていない問題!
まさかそんな返しが来るとは思ってもみなかった!
確かに私も、先生に意地悪し過ぎていた気はします」
フフフ・・・
やっぱり意地悪されていたんだな、と改めて思い知らされてしまった。
でも、今はそんなことはどうでもいい。
「そうだよ、西森が意地悪・・・というか、おれのダメなところを的確に指摘してくるのが、『さすが優等生』という感じで近づきにくかったし、いつも無表情か怒った顔しか見たことがなかったから、本当に苦手だったんだ。
でも・・・」
「でも?」
「あの夜、公園で出会って、学校では話さないような話をした時、西森が初めて見せた笑顔や照れ顔が本当に可愛くて、忘れられなくなって・・・」
おれは顔を上げて、西森の顔を真っ直ぐ見ながら、
「それから、おまえのことしか見えなくなってしまったんだ!」
と、正直な気持ちを叫んだ。
「!?」
先ほどまで冷静に話を聞いていた西森が、『おまえのことしか見えなくなってしまったんだ!』発言を受け、再び頬を真っ赤にしてびっくりしている。
困らせているのは分かっているけど、これがおれの正直な気持ちだから仕方がない。
言ってしまったから仕方ない!
半分『やりきった感』と、半分『やってしまった感』がおれの心の中でグルグル交差する。
『どうしよう、どうしよう!?』と思っていると、突然西森が、
「そんなの、ウソです!」
と言い出した。
「ハ!?ウソ!?」
びっくりするおれに、西森はキッとにらんでくる。
「だって先生、あの夜の次の日から、私のことをさらに怖がって、近づいても来ないし、話しかけても来ないし。おまけに、他の女の子達と仲良さそうに話ばっかりしていて、私のことなんて完全に無視してたじゃないですか!」
その言葉を聞いて、おれはさらにびっくりする。
「いやいやいや、無視していたのは西森の方だろ!?
授業中、ずっとおれをにらんでいるし、おれがミスをしても、一切突っ込んでもこなくなったし!
あの時、おれがどれだけ西森のことで、心かき乱されていたのか全然知らないだろ!」
そこまで言うと、壊れかかっていた気持ちの『ストッパー』が、完全に「パーン!」と壊れてしまったようで、言葉を選びながら話す余裕などなくなっていた。
「おれと西森は『教師と先生』という立場で、教頭先生からも「女子生徒に手を出すな」と釘を刺されていたから、何度も何度も西森のことを忘れようと思ったよ!
でも、忘れようとしていた時に、またこうやって出会って、一緒の時間を過ごしていたら、もっともっとおまえのことを好きになってしまったんだ!」
『西森のことが好きだ!』
それがおれのストレートな気持ちだった。
もう隠すこともできなかったし、隠しきれなかったから、言葉に出してしまった。
しかし、『好きだ』と伝えられた西森は、驚きの余り固まってしまっている。
そりゃ突然、学校の先生から『好きだ!』と言われて、困惑しない生徒はいないだろう。
困りきっている表情の西森を見ていると、『やっぱり伝えるべきではなかった』という後悔の念が押し寄せてきた。
これで西森の成績が落ちてしまったら、完全におれのせいだ・・・。
ああっ、もうっ!
この後悔とバカなやり取り、何回さっきから繰り返しているんだよ!
そんなことを考えていると、
「本当に先生は、私のことが好きなんですか・・・?」
と西森がポツリとつぶやいた。
「え?」
まさか、西森からそんなことを聞かれると思わなかったので、一瞬うろたえてしまったが、真剣な目でおれを見つめる西森を見ていたら、自然と言葉は出ていた。
「好きだよ。
優等生の西森も、照れた顔の西森も、笑顔がかわいすぎる西森も、全部ひっくるめて好きだよ」
西森は真っ赤になってうつむくと、急におれのシャツをギュッと握りしめてきた。
「に・・・西森?」
この反応は、どう解釈したらいいんだ?
『Yes』なのか『No』なのか?
緊張が高まって、頭がクラクラする。
お互いの様子をうかがっているような状況が、1分ぐらい続いた後に、西森が口を開いた。
「先生は私のことを『好きだ』と言ってくれましたが、
私は・・・、私のこの気持ちは、何なのか分からないんです・・・」
西森はグッと顔を上げ、こう言った。
「だって、こんなこと、教科書や参考書に一切書かれてなかったから、どう解いていいか分からないんです!」
教科書や参考書に一切書かれていない問題!
まさかそんな返しが来るとは思ってもみなかった!