第9話:風邪をひいた日の話(その10)

文字数 495文字

真っ暗な車内で、夏菜と唇を重ねる。

熱は微熱だと言っていたけど、頬に添えた手からは火照ったような熱を感じた。

「ん・・・」

夏菜が小さな声をあげたので、そっと唇を離す。

すると、夏菜は少し怒ったような目をして、
「も、もう・・・
なんで、我慢できないんですか?
風邪がうつっちゃうかもしれない、って言ってるのに」
と抗議してきたが、おれは、
「だって、うつってもいいから、キスしたかったんだ」
と素直に答えると、夏菜も何も言えなくなったみたいで、頬を真っ赤にして照れている。

「風邪になっても、知りませんからね!」

夏菜はそう言うと、車から降りて家に帰っていった。

急に静かになった車内で一人、運転席に座ったまましばらく余韻に浸る。

抱きしめるつもりも、キスするつもりも無かったのに。
でも、やっぱりガマンできなくて、強行突破してしまった。

少し抵抗しつつも、受け入れてしまう夏菜の可愛さが、たまらなくて、何度もそのシーンを思い出してしまう。

そんな感じで、しばらく幸せをかみしめていたのだが、時刻を見ると、もう10時だ。

「やばい!
明日の授業の準備が残ってるのに!」

急に現実に戻され、あわてて車を降り、自分の部屋へ向かった。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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