第16話:二人きりの夜(その16)

文字数 800文字

「『好きな人』は、いないかもしれないけれど、『気になっている人』はいるかも・・・」

え?
おれは何かの聞き違いではないかと思った。

西森が「気になっている人がいる」と言ったのは、初耳だったからだ。

しかも、おれの顔を見ながら言うなんて・・・。

自然と心臓の音が高鳴る。

すると電話から水野君の声が聞こえた。

「そっか・・・。
知らなかった、西森に「気になっている人」がいたなんて。
それは同じ学校の人?」

水野君にそう聞かれ、西森は、
「う・・・うん・・・」
と答える。

西森の「気になっている人」は同じ学校の人・・・。

まだ誰なのかはっきり聞いたわけでもないのに、なぜか「それはおれのことなんじゃないのだろうか」という変な自信みたいなものがわいてくる。

というか「おれ」であってほしい、という願望も混ざっているのだが。

すると水野君が、
「その人って・・・」
とつぶやいたのだが、すぐに、
「あ、いや、分かった。
今日はこの辺でやめておくよ。
ゴメン、変なこと急に聞いて。
じゃ、また明日」
と言って、電話を切った。

「ツーツー」という電話が切れた音が部屋に響くと同時に西森が、
「もう!先生!
なんで電話している時に、急に抱きしめてくるんですか!
水野にバレたらどうするんですか!」
と怒ってきた。

が、おれはすぐさま西森を再び後ろからギュッと抱きしめ、
「西森の『気になる人』って誰?」
と聞いた。

「おれ」と言ってくれる保証なんて無い。

もしかしたら、同じ学校の別のヤツかもしれない。

半分「期待」の気持ちと、半分「不安」の気持ちが入り混じる。

西森は抱きしめられたまま、じっとしていたが、
「・・・いないじゃないですか・・・」
と小さな声でつぶやいた。

「え?」

何て言ったのか聞き取れなくて、西森の顔をのぞきこむ。

すると西森は顔を真っ赤にしながら、
「『先生』しかいないじゃないですか!
こんなに私にちょっかい出してくる人は、今まで誰もいなかったんですから!」
と言った。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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