第10話:クリスマス・デート(その11)

文字数 863文字

「ちょ、ちょっと涼介!
これはさすがに・・・・」

あわてて『サンタコス』を返そうとすると、涼介は、
「別に無理に着せろって言ってるわけじゃないから。
でも、もし何かのチャンスがあって、そういう雰囲気になった時に、な」
と言って、返品を受け付けてくれない。

何かのチャンス!?
そういう雰囲気!?

そんな時に、西森にこんな衣装着せたら、絶対、おれは歯止めが効かなくなってしまうだろ!?

しかし返品を受け付けてくれないので、仕方なくカバンに入れながら、
「い・・・一応もらっておくけど、使わないからな・・・」
とボソリと言うと、涼介は笑いながら、
「ま、今年は無理かもしれないけど、これからもずっと付き合うんだったら、西森ちゃんが卒業してから着させるのも有りだろ?
けっこうその衣装、かわいい服らしいから」
と言った。

卒業・・・
まだまだ先の話だよ・・・。

その頃、おれと西森はまだ『彼氏・彼女』の関係でいられるのか?

おれはずっと一緒にいたいと思っているけど、西森はまだ若いし、これからもっともっと素敵な出会いが待っているだろうし・・・。

ダメだ!ダメだ!

クリスマスを前に、悲しい気持ちになりそうな考え方はよくない!

気持ちの切り替えと、酔いを醒ますために、水を一杯グッと飲んだ。

すると涼介が、
「お、もうこんな時間か。
そろそろお開きにしようか」
と言ったので、時計を見ると、時刻は11時を過ぎていた。

「そうだな、そろそろ帰るか」

お会計を済まし、店を出る。

涼介に、
「酒飲んだけど、今から家まで帰るの?
タクシー?」
と聞くと、
「いや、今日はその辺のビジネスホテルに泊まって、明日車で帰るよ。
じゃあな、今日は楽しかった。
素敵なクリスマスを過ごせよ!」
と言って、夜の街に消えていった。

涼介と別れた後、駅に向かって歩き始める。

街はイルミネーションで鮮やかに彩られ、店の入り口にはクリスマスツリーや雪だるまのディスプレイが置かれ、それを見ているだけでも心が躍る。

空を見上げると、強い光を放つ星が何個か見えた。

「クリスマス、待ち遠しいな・・・」

西森と過ごすクリスマスまで、あと10日。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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