第14話:ドキドキ初デート(その14)

文字数 908文字

心臓の音がドキドキと高まっていく。

すると、西森が口を開いた。

「一番の目標は、『私を振り向かせる』ことじゃなくて、『授業をスムーズに行えること』にしてください」

「えっ!?」

こんないい雰囲気の中で、まさか「お説教」が返ってくると思ってなかったので、思わず言葉を失う。

「がんばっているのは分かるんですけど、もうちょっと授業が分かりやすくなるといいな、と思います。
なので、今はそちらに力を入れてください」

西森にお説教され、
「そ・・・そうですね・・・
授業、がんばります・・・」
と、ちょっと半泣きになりながら答えた。

そんなやりとりの後、エンジンをかけ、車を再び走り走らせる。

はあ・・・
『両思い』なんて、まだまだ夢の先だよな。
ま、これが現実か。

そう嘆いていると、西森が再び隣でポツリとつぶやく。

「でも、もし・・・」

「もし?」

「私が、先生を本当に好きになったら、先生は一線を越えて、何かしてくるんですか?」

「ハイ!?」

西森の追加の「ビックリ発言」に、おれは再び、急ブレーキをかけそうになった。

やめてーっ!
運転している時に、横で時々、ドッキリするようなことをつぶやくのは!

さらに追い打ちをかけるように、西森が、
「先生は、私が本当の彼女になったら、どんなことがしたいんですか?」
と、さっきから『おかしなこと』ばっかり言ってくる!

西森ーっ!

さっきは「授業をがんばれ」とお説教したくせに、今度は真逆のきわどい質問をしてくるから、おれの頭の中は大パニックだ!

どんなことがしたいか、って、まだそんな具体的なことなんか、全く考えてねーよっ!

でも何か答えないと、また西森が変なことを言い出しそうなので、とりあえず、
「そうですね・・・遊園地にでも行きたいです」
と言うと、西森も、
「遊園地・・・恋人っぽくて、いいですね」
と、うれしそうに答えた。

うん、遊園地だったら、(仮)恋人のままでも行けるんだけどね。

でも、「遊園地」ぐらいで喜んでいる純粋な西森を見ていると、本当に「両思い」になった時、おれに「一線越える」勇気があるかないか・・・。

ま、それはその時、またいろいろと考えよう。

そんなこんなしているうちに、やっと目的地の「青少年自然の館」が見えてきた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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