第29話:トキメキ文化祭

文字数 830文字

案内され着いた「お化け屋敷」は、入口に本物の竹や草を飾り『不気味な』雰囲気をかもしだしている。

生徒が作った割には、けっこうリアルに出来ていて、その完成度に驚いた。

「高山先生、来てくれたんだ!」

受付にいた女子達に声をかけられる。

おれはお化け屋敷を眺めながら、
「1年5組は『お化け屋敷』をやるって聞いていたけど、装飾、すごいがんばってるじゃん。
リアルすぎて、今から怖いんだけど」
と言いながら、西森の方をチラッと見る。

すると、西森はガクガク震えて怖そうな顔をしていた。

「西森?
どうした、怖いのか?」

そう聞くと、西森はコクンとうなずき、
「は・・・はい・・・。
なんか思っていたより、怖そうで・・・。
これって、お化けとか出てくるんですよね?」
と言ったので、水野君が、
「お化けの出てこない『お化け屋敷』なんかあるわけないだろ。
というか、意外。
西森って怖いモノなさそうなイメージだったのに、お化けが怖いなんて、かわいいところあるじゃん」
と笑いながら言った。

すると、負けず嫌いの西森は、
「ちょ、ちょっと怖いと思っただけだもん!
入ったら、意外と怖くないかもしれないじゃん!」
と言い返している。

そんな二人のやり取りを見ていた、受付の生徒が、
「じゃあ、2人で入ってみれば?
そしたら、彼女が『怖がるか怖がらないか』、彼氏も分かると思うし」
と、とんでもない提案をしてきた!?

おおいっ!
ちょっと、待てっ!!

西森は水野君の彼女じゃないし、水野君は西森の彼氏でもない!

と叫びたかったが、こんな人の多いところで叫んでしまったら、おれと西森のヒミツの関係がばれてしまう。

そうなってしまえば、西森に多大な迷惑をかけてしまうことになる。

だから何も言えず、黙って様子を見ていると、水野君が、
「じゃあ、試してみよう」
と言って、西森に手をつかんで『お化け屋敷』の入口に向かった。

「み、水野君!?」

思わず声を出してしまったが、止めることも出来ず、水野君と西森は暗闇の『お化け屋敷』に入って行ってしまった・・・。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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