第33話:トキメキ文化祭

文字数 1,001文字

「はあああ・・・
なんで、逃げちゃったんだよ・・・」

警備のため正門に来たおれは、お化け屋敷の件を思い出し大きくため息をついた。

さすがにおちゃらけた格好で警備は出来ないので、執事の衣装から普段着に着替えたのだが、通りすがりの生徒や先生達から、
「あれ?
もう執事は終わったの?」
と冷やかされるので、苦笑いをするしかなかった。

それよりも気がかりなのは、西森と水野君のことだ。

もちろん事情は分かっている。

西森が水野君に抱きついたのは、お化けが怖かっただけで、深い意味は無いってことに。

分かっているのだが、どれぐらい長く抱きついていたのか、とか、どこに抱きついたのか、など考え出すと、やはりヤキモチが止まらない。

「あああ・・・
ほんと、かっこ悪いな。
彼女のこと、信じてやればいいのに・・・」

今日は文化祭。
正門からは、どんどんお客さんが校内に入って来る。

家族連れや、女の子のグループ、他校生の男子、そして仲良さそうなカップル達。

学生同士のカップル達がキラキラまぶしくて、うらやましく見える。

おれも今学生だったら、西森とあんな感じで手をつないで、堂々と文化祭を見て回れるのに・・・。

そう思っていた時、
「高山先生」
と声をかけられ、振り返ると保健の城山先生が立っていた。

城山先生はニコニコ笑いながら、
「警備のお仕事、お疲れ様です。
もうすぐ警備、終わります?」
と聞いてきたので、
「あと、30分ぐらいですね」
と答えると、城山先生はウルッと目を潤ませながら、
「じゃあ、警備が終わったら、一緒に文化祭見て回りません?
ちょうど私も空き時間なので、お食事でも御一緒にできれば、と思って・・・」
と言ってきた。

「え?」
と、ちょっと驚いていると、一緒に警備をしていた化学の大森先生が袖を引っ張り、
「おい、高山!
城山先生から誘い受けてるじゃないか!?
おまえだけ、ズルいぞ!!」
と言ってきた。

そういえば、大森先生、城山先生のこと狙ってたっけ・・・。

なので、機転を利かせ、
「じゃあ、城山先生、大森先生も一緒にゴハンでいいですか?」
と聞くと、明らかに城山先生は表情をゆがめ、
「え?
大森先生もですか?」
と嫌そうに答える。

ん?ん?
あれ?
おれ、何かヤバいことやったっけ・・・

城山先生と大森先生に挟まれ、変な空気に包まれていた時、
「先生!」
と呼ばれた。

聞き覚えのある声・・・。

そう、忘れるはずもない、西森の声だ!

振り返ると西森がこちらに向かって走って来ていた。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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