第27話:二人きりの夜(その27)

文字数 865文字

西森はおれのスマホを見せ、
「先生の電話、鳴っています」
と言って、こっちに持ってくる。

「電話?」

こんな朝から誰からだろう、と思って表示を見てみると、涼介からだった。

通話ボタンを押し、
「ハイ、もしもし、涼介どうした?」
と聞くと、電話の向こうから涼介が、
「流星、今から車で迎えに行こうと思っているけど、用意は出来たか?」
と聞いてきたので、
「あ・・・今から朝食を食べようかと・・・」
と答えると、
「のんびりしてる場合じゃないぞ!
水野君が一緒に迎えに行きたい、って言ってるんだよ!
だから、怪しまれないように自然な形で西森ちゃんと出て来いよ!
今から30分後に着くように調整するから」
と言ってきた。

水野君が来る!?

予想外の事態に、ビックリして、
「え!?マジか!?
分かった、なんとかする!」
と言って電話を切ると、急いで濡れている顔をタオルで拭いた。

おれのあわてぶりを見た西森は、
「先生、どうしました?」
と首をかしげたので、
「涼介と水野君が、30分後に車で迎えに来るらしいから、とりあえず急がないと!」
と言うと、
「え?水野もですか!?」
と西森も驚いた。

「おれも涼介だけ来ると思っていたのに、水野君も来るってことは、やっぱり・・・」

「やっぱり?」

おれは西森の方をチラッと見て、
「おれと西森の関係を疑っているのかもしれないな。
だから二人の様子をチェックしようと思っているのかもしれない」
と告げた。

本当に疑っているのかどうか真相は分からないけど、西森のことを心配していることは間違いないだろう。

「水野君が来る」ことを知った西森は、頭を抱え、
「どうしよう・・・
私、上手くごまかせるかな・・・」
とつぶやいた。

部屋では宿の人が朝食の準備をしている音が聞こえる。

おれは、西森の手を引き洗面所の中に入れると、宿の人に聞こえないようにソッと扉を閉めた。

「先生?」

二人きりになったところで、西森をギュッと抱きしめる。

西森はちょっと驚いたようだったが、すぐに同じようにギュッと抱きしめ返してくれた。

おれはさらに強く抱きしめ、
「大丈夫、絶対に水野君に渡さないから」
と言った。

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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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