第1話:二人きりの夜(その1)

文字数 858文字

「ちょ、ちょ、ちょっと待って!
一緒の部屋じゃなくて、別々の部屋でお願いします!」

あわてて、旅館の人を呼び止めたが、
「ごめんなさい、残り1室しか空いていないんです。
でも、カップルさんですし、大丈夫ですよね?」
と言われてしまった・・・。

部屋が空いていると言われたので、2~3部屋空きがあったのかと思っていたのに、まさか1部屋しか残っていなかったなんて・・・。

想定外も想定外過ぎる!

西森と二人きりで同じ部屋に泊まるなんて、いろいろヤバいでしょ!?

おれはあわてて西森の方に振り返り、
「ごめん、西森。
まさか1部屋しか空いていなかったなんて思いもしなかったから・・・」
と謝ると、西森は、
「仕方ないじゃないですか。
1部屋しか空いてないなら、そこに泊るしかないでしょ」
と、めっちゃ冷静な回答をしてきた。

え?何?
こんなにドキドキしているのは、おれだけなの?

西森は、一緒に泊ることに対して、特に何も思っていないの?

かなり割り切ったような答えに、ちょっと戸惑ってしまった。

すると西森がさらに追い打ちをかけるように、
「一緒の部屋に泊まるって言っても、寝る場所は別々にしてもらいますし。
何か変なことしてきたら、部屋の外に締め出しますから」
と言っておれをジロリとにらんできたので、
「は・・・はい・・・何もしません・・・」
と答えるしかなかった。

おっしゃる通りです。

もちろん何もしません。

お風呂に入ったら、さっさと寝ることにします。

うん、絶対にそうしよう。

変な気を起こさないように!

そんな会話をしていると、宿の人が再び奥の方からやって来て、
「お二人とも濡れていますし、先にお風呂に行かれた方がよろしいかと。
浴衣をお持ちしましたので、お風呂場にご案内いたしますね」
と言って、おれと西森に浴衣を渡した。

「そんなに広くは無いんですが、大浴場がありますので、さっぱりなさってください。
お部屋の方は、後でご案内させていただきますので、お風呂から出られましたら、またお声掛けくださいね」

案内し終わると、宿の人は、
「ごゆっくり」
と言って、その場から去って行った。
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登場人物紹介

高山流星

地学担当教師

西森夏菜

学年一の秀才。真面目な優等生。

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