第57話 祐紀、御神託の内容を話す
文字数 2,649文字
祐紀の
「もしかして
「はい。」
「そうか・・。」
そういうと佐伯は腕を組んだ。
そして・・。
「祐紀よ、具合が悪いようなら寝たままで話せ。」
「いえ、大丈夫です。」
「無理をするでない。」
「いえ、御神託をお伝えするのに寝た状態は神へ対し失礼になります。」
「そうか、ならば仕方あるまい・・。」
佐伯は心配そうな顔をして祐紀を見つめた。
祐紀はその様子に気がつかない振りをする。
そして話し始めた。
「この
「うむ、都の近くではないが流れておる。」
「そうですか・・。」
「・・お前はこの国の地図を見たことがないのか?」
「はい。」
その言葉を聞いて、佐伯は立ち上がった。
「地図を持って参る、しばし待て。」
「はい。」
そういうと佐伯は部屋から出て行った。
しばらくすると地図を持って戻り、その場で地図を広げる。
「あの・・、神官
「この地図はお前にみせて問題のないものじゃ。気にする必要は無い。」
「わかりました。」
佐伯は
「ここが都じゃ。」
「はい。」
「そしてここが大川。」
「都からかなり外れておりますね。」
「うむ。お前が大川を知らぬのも無理からぬことだ。」
「はい。」
「この川は穏やかで、過去に遡っても氾濫はしておらん。」
「そうですか・・。」
「ただ、この川の流れる地域で、最近は
「干ばつですか? それでは川が
「いや、水源が豊かなためか、川の水が干上がることはない。
しかし、干ばつの年は農作物への影響は否めん。
だが
「そうですか、
「うむ。この川は農業用水としては必要不可欠であり、水路としても重要じゃ。」
「わかりました。」
祐紀の
「聖山である
「かなり大きな川なのですね。」
「うむ。 しかし都の水源はこの川ではない。」
「そうですか。」
「大川については分かったか?」
「はい。」
「では、その川がどうした?」
佐伯は祐紀の顔をのぞき込むように問いかけてきた。
祐紀は、どう話せばよいか悩む。
そして祐紀は答える前に、
「それを答える前に、閻魔堂という
「閻魔堂?」
「はい。」
「閻魔堂は確かにあるが・・。」
「この地図でいうと、どこでしょうか?」
その言葉に佐伯は、地図上の
その場所は、大川の直ぐ側にあった。
「大川の直ぐ近くなんですね。 それも都と直進距離でもっとも近い大川の側ですね。」
「うむ。そうじゃが?」
佐伯はそういうと
それはそうであろう。
大川の事を聞いたかと思えば、今度は脈絡もなく閻魔堂の事を聞いてくる。
困惑するのが普通だ。
そんな佐伯の様子を無視して、祐紀はさらに閻魔堂について質問をする。
「その御堂の
「由来のう・・。」
佐伯は、由来ということばに一瞬反応した。
「では、
「・・
「100年ほど前にいた僧侶です。」
「・・・ふむ。」
「なにか心辺りが?」
「無い事もない。」
歯切れの悪い佐伯の言葉に、今度は祐紀が怪訝な顔をした。
「どのような事を知っておいでですか?」
「・・・。」
「何か言い伝えを知っておいでなのでは?」
「祐紀は言い伝えを知っておるのか?」
「いいえ。」
「・・慧眼和尚を知っているのは御神託でか?」
「はい。」
佐伯はこの言葉に目を見張る。
御神託が関連している?・・。
ということは、言い伝えは単なる空想の物語ではないのか・・?
佐伯の手は震えた。
そして祐紀に訪ねる。
「もしかして
「はい、ただ私が知ったのは御神託によってですが。」
「なんじゃと!」
「?」
「では
「えっと・・、少なくとも地龍はいたかと・・・。」
「では、あの伝承は事実か?!」
「あの・・すみませぬ、御神託で伝承が真実かどうかは分かりません。」
「・・そうなのか?」
「はい。それに私はその伝承を知らないのです。」
「伝承を知らない?」
「よければ、その伝承を教えていただけませぬか?」
「それは構わんが・・。」
「では、教えて下さい。」
「何故、そのようなことを知りたがる?」
「御神託の
「御神託のためでも? 別の目的もあるのか?」
「はい・・、その・・、殿様にお目通りをする切っ掛けになれば、と。」
「・・・祐紀よ、なぜに殿にそれ程に会いたがる。」
「それは・・、今は言えません。」
「・・・・。」
「申し訳ありません。」
そういうと祐紀は深々と頭を下げた。
その様子を見て、佐伯はゆっくりと首を振った。
「・・・わかった。」
「すみません。」
「顔を上げよ。」
「はい。」
祐紀は下げていた頭を上げる。
佐伯は祐紀の目を見つめと、かるく溜息をついた。
そして・・
「伝承じゃがな・・。」
「はい。」
「儂が調べて知っている範囲の話しとなるが、よいか?」
「はい。」
佐伯は一度、目を瞑り押し黙った。
そして目を開くと