第147話 来訪者・神薙の巫女 4
文字数 2,446文字
神父はそういえば・・と、何か思い出したようだ。
そして徐 に話し始める。
「噂話しなのですが・・。
相手が真剣 で斬りかかってきても、散歩でもしているかのように相手の方に歩いたとか。
そして相手の真剣はことごとく空を切り、気がつくと相手が宙を舞っていたと聞いたことがあるのですが?」
助左 は神父がその噂話について何を聞きたいのかわからなかった。
首を傾げる助左に神父は言葉を重ねる。
「真剣を簡単に躱 したんですよね?」
「そりゃあ、死にたくないですから。
躱さないと死んじゃいますよ?」
「いやいやいや、そういう事を言っているのではないのです。
真剣などそう簡単に避けられないでしょ?」
「そうですか?」
「それにです、相手がどうして宙に舞って倒れたか分からないと言う点もです。」
「どうして相手が宙に舞ったか分からないのが不思議なんですか?
おおかた足が滑 ったか、足が何かに引っかかり転んだのではないですか?
それが何もしないのに宙をまっていたかのように見えたんでしょうね。
よく有ることです。」
「・・・良くある事ですか?
道場の高弟達ともあろう者が、試合中に足を滑らせますか?
それも宙を舞うほどに?
足を何かに引っかけたというのも可笑しな話しですよね?
手入れの行き届いた道場での試合で。
足が引っかかるような床の道場があるんですか?」
その言葉を聞いた助左は、目を反らし顔を明後日 の方向に向けた。
それを見た神薙 の巫女 は思わず笑ってしまった。
先ほどから自分の実力を隠そうとしては失敗し、失敗する度 に目を反 らす助左が神薙の巫女は可笑 しくてしかたない。
神父もそんな助左の様子と神薙の巫女の笑いにつられて苦笑いをする。
だが、気を取り直し神父は話しをすすめる。
「話しが逸れてしまいましたね。
神雷鬼 と何故呼ばれた理由が知りたかったのですよね。」
「はい・・。」
「それは先ほど話した噂、いや真実でしたね。」
「神父様、それは先ほど噂だとご自分で言ったでは無いですか!」
助左がすかさず訂正しようとしたが、先ほどの会話から真実であるのは間違いはない。
神父は助左の申し出を無視した。
「先ほど話したような試合を見たら誰でも思うのではないでしょうか?」
「?」
「まるで神業 のような武術を使う武芸者であること。
そして閃光を放ち甚大な被害を与える雷なような武芸者・・。」
「ゴホン!」
助左が突然、咳をした。
「?」
「神父様、試合をしただけで甚大な被害など与えておりませぬが?」
「え? その当時名も知らぬ道場破りに有名な道場が簡単に負けたんですよ?
それも師範代など高弟がことごとく。
道場では甚大なる被害以外の何物でもないと思いますが?」
「いや、他流試合を禁止しているわけでもなく門戸を開放していた道場ですよ?
私はそこに行き、たまたま運良く試合で勝っただけです。
試合など時 の運です。
それを甚大なる被害などと。」
「はぁ、まあ神雷鬼と呼ばれている人からはそうなものかもしれませんが・・。」
「だからぁ、神雷鬼などと大げさな二つ名で呼ばないでください!」
「え? ああ・・わかりました、では何とお呼びすればよいのですか?」
「だから、助左と。」
「・・・偽名で呼べと?」
「ここでは本名です!」
「・・・はぁ~、わかりました助左・・・。」
「最初からそう言ってくださればいいのです。」
その二人のやり取りに神薙の巫女は袖で口を塞ぎ笑いを堪 えていた。
「まあ、ともかく道場は助左という道場破りにいいようにあしらわれたわけです。」
「だからぁ、道場破りではなく他流試合ですから。」
「・・・まぁ、確かに他流試合といえばそうなのでしょうけど。」
「他流試合です。」
「はぁ・・わかりました・・他流試合です。」
「分かっていただけて良かったです。」
「まあ、いずれにせよ道場は助左一人に門弟全てがあしらわれた訳です。」
「神父様、あしらうなどと・・。
その当時若造であった私に名だたる道場があしらわれるわけがないでしょ?」
助左のその言葉に神父は
「そうですね、甚大な被害とか、あしらうとかは言い過ぎのような気がしないでもないような気がしないでもないですね。」
その言葉に神薙の巫女が首を傾げる。
気がしないでもないような気がしないでもない?
・・・・
え~と、気がしないでもないような、は、気がしているでいいのかな?
そしてそのような気がしないでもないのだから・・
つまりは、そう思っているということでいいのかな?
とどのつまり甚大な被害をあたえ道場をあしらったといういうことでいいんですよね?
?マークが神薙の巫女の頭の上に幾つも現れては消える。
そんな神薙の巫女に、神父は話しかけた。
「なにはともあれ神雷鬼という由来は、3つの意味から来ています。
閃光のように一瞬のうちに、相手を打ちのめした意味の雷。
そして、鬼のような強さ。
それらは神技と言う意味の神。
それで神雷鬼という二つ名になったと聞いています。」
助左はこの説明に、ものすごく嫌そうな顔をした。
神父はそれに構わず神薙の巫女に目を会わせ話しを続ける。
「いかがですか、二つ名の由来からもわかるでしょ?
助左の強さが。」
「え?! え、ええ・・。でも、助左は本当に神雷鬼なのですか?」
「ええ間違いありません。
見た限りではとても温厚で信じられませんけどね。
何より最高司祭様からの手紙にそのように書かれておりました。」
「え? 養父様が?! ならば・・信じます。
でも、他国の宮司 ・、いえ助左に護衛を頼むなどと・・。」
「助左では、嫌だと?」
「いえ! 滅相もない!」
「護衛として不服ですか?」
「と、とんでも御座いませぬ!」
「では、助左、神薙の巫女の護衛をよろしく願いますね。」
「承りました。」
「神薙の巫女よ、助左は名目上は神事の補助として付けます。
よろしいですね?」
「え? あ、はぃ・・・。」
神薙の巫女は神父に押し切られ、助左の護衛を受ける事になった。
そして
「噂話しなのですが・・。
相手が
そして相手の真剣はことごとく空を切り、気がつくと相手が宙を舞っていたと聞いたことがあるのですが?」
首を傾げる助左に神父は言葉を重ねる。
「真剣を簡単に
「そりゃあ、死にたくないですから。
躱さないと死んじゃいますよ?」
「いやいやいや、そういう事を言っているのではないのです。
真剣などそう簡単に避けられないでしょ?」
「そうですか?」
「それにです、相手がどうして宙に舞って倒れたか分からないと言う点もです。」
「どうして相手が宙に舞ったか分からないのが不思議なんですか?
おおかた足が
それが何もしないのに宙をまっていたかのように見えたんでしょうね。
よく有ることです。」
「・・・良くある事ですか?
道場の高弟達ともあろう者が、試合中に足を滑らせますか?
それも宙を舞うほどに?
足を何かに引っかけたというのも可笑しな話しですよね?
手入れの行き届いた道場での試合で。
足が引っかかるような床の道場があるんですか?」
その言葉を聞いた助左は、目を反らし顔を
それを見た
先ほどから自分の実力を隠そうとしては失敗し、失敗する
神父もそんな助左の様子と神薙の巫女の笑いにつられて苦笑いをする。
だが、気を取り直し神父は話しをすすめる。
「話しが逸れてしまいましたね。
「はい・・。」
「それは先ほど話した噂、いや真実でしたね。」
「神父様、それは先ほど噂だとご自分で言ったでは無いですか!」
助左がすかさず訂正しようとしたが、先ほどの会話から真実であるのは間違いはない。
神父は助左の申し出を無視した。
「先ほど話したような試合を見たら誰でも思うのではないでしょうか?」
「?」
「まるで
そして閃光を放ち甚大な被害を与える雷なような武芸者・・。」
「ゴホン!」
助左が突然、咳をした。
「?」
「神父様、試合をしただけで甚大な被害など与えておりませぬが?」
「え? その当時名も知らぬ道場破りに有名な道場が簡単に負けたんですよ?
それも師範代など高弟がことごとく。
道場では甚大なる被害以外の何物でもないと思いますが?」
「いや、他流試合を禁止しているわけでもなく門戸を開放していた道場ですよ?
私はそこに行き、たまたま運良く試合で勝っただけです。
試合など
それを甚大なる被害などと。」
「はぁ、まあ神雷鬼と呼ばれている人からはそうなものかもしれませんが・・。」
「だからぁ、神雷鬼などと大げさな二つ名で呼ばないでください!」
「え? ああ・・わかりました、では何とお呼びすればよいのですか?」
「だから、助左と。」
「・・・偽名で呼べと?」
「ここでは本名です!」
「・・・はぁ~、わかりました助左・・・。」
「最初からそう言ってくださればいいのです。」
その二人のやり取りに神薙の巫女は袖で口を塞ぎ笑いを
「まあ、ともかく道場は助左という道場破りにいいようにあしらわれたわけです。」
「だからぁ、道場破りではなく他流試合ですから。」
「・・・まぁ、確かに他流試合といえばそうなのでしょうけど。」
「他流試合です。」
「はぁ・・わかりました・・他流試合です。」
「分かっていただけて良かったです。」
「まあ、いずれにせよ道場は助左一人に門弟全てがあしらわれた訳です。」
「神父様、あしらうなどと・・。
その当時若造であった私に名だたる道場があしらわれるわけがないでしょ?」
助左のその言葉に神父は
やれやれ
という顔をし折れた。「そうですね、甚大な被害とか、あしらうとかは言い過ぎのような気がしないでもないような気がしないでもないですね。」
その言葉に神薙の巫女が首を傾げる。
気がしないでもないような気がしないでもない?
・・・・
え~と、気がしないでもないような、は、気がしているでいいのかな?
そしてそのような気がしないでもないのだから・・
つまりは、そう思っているということでいいのかな?
とどのつまり甚大な被害をあたえ道場をあしらったといういうことでいいんですよね?
?マークが神薙の巫女の頭の上に幾つも現れては消える。
そんな神薙の巫女に、神父は話しかけた。
「なにはともあれ神雷鬼という由来は、3つの意味から来ています。
閃光のように一瞬のうちに、相手を打ちのめした意味の雷。
そして、鬼のような強さ。
それらは神技と言う意味の神。
それで神雷鬼という二つ名になったと聞いています。」
助左はこの説明に、ものすごく嫌そうな顔をした。
神父はそれに構わず神薙の巫女に目を会わせ話しを続ける。
「いかがですか、二つ名の由来からもわかるでしょ?
助左の強さが。」
「え?! え、ええ・・。でも、助左は本当に神雷鬼なのですか?」
「ええ間違いありません。
見た限りではとても温厚で信じられませんけどね。
何より最高司祭様からの手紙にそのように書かれておりました。」
「え? 養父様が?! ならば・・信じます。
でも、他国の
「助左では、嫌だと?」
「いえ! 滅相もない!」
「護衛として不服ですか?」
「と、とんでも御座いませぬ!」
「では、助左、神薙の巫女の護衛をよろしく願いますね。」
「承りました。」
「神薙の巫女よ、助左は名目上は神事の補助として付けます。
よろしいですね?」
「え? あ、はぃ・・・。」
神薙の巫女は神父に押し切られ、助左の護衛を受ける事になった。