第24話 庄屋
文字数 2,277文字
祐紀は峠に留めた馬に辿り着くと、馬に乗りユックリと峠を下る。
馬を飛ばして庄屋らしき男の手前で止ったり、追い越してから声をかけて怪しまれないためにも、ゆっくり進む必要があった。
それに男の足といえども、馬の並足よりは遅いので、ゆっくり行っても追いつけるはずだ。
馬に乗ること小一時間、目的の庄屋姿の男に追いついた。
庄屋姿の男は、馬の蹄の音に気がつくと、道を空けるために端に寄る。
祐紀は庄屋姿の男に近づくと暢気な声で挨拶をした。
「今日 は。」
庄屋姿の男は声をかけられるとは思わなかったのだろう、すこし驚いた気配 がしたが、挨拶を返して寄越した。
「今日は。」
「旅のお方でないのに、こんな峠道を歩いてどうされましたか?」
「え?」
普通に考えても、こんな峠道を通るとしたら、行商人か旅人くらいなものだろう。
祐紀でなくても尋ねるであろう。
「何かありましたか?」
「いや、そういうわけではないのですが、さるお方が峠に忘れ物をしたというので見に参ったのですよ。」
「そうですか、それは大変でしたね。
それにしても、こんな峠まで見に来られるなんて大変ですね。」
「いえ、これもお勤めのようなものなのですよ。」
「お勤めですか?」
祐紀は首を傾げて、不思議そうな顔をする。
「ええ、私はこの先の青木村の庄屋なんですよ。」
「ああ、どうりで着ている物が違いますね。」
「まあ、見苦しい格好もできませんしね。」
やはり庄屋であったか。
それに、どこの者か分かったことに満足をした。
「それにしても、忘れ物を探しにいくとは大変ですね。」
「ええ、まあ、さる身分の方からの依頼でしたので。」
「そうですか、捜し物は見つかったのですか?」
「いえ、見つからないので帰る途中なんですよ。」
「そうですか・・、もし良かったら送って行きますが。」
「いえいえ、それには及びません。すこし歩きたいので。」
「そうですか、ではお先に。」
そう言うと祐紀は、またユックリと馬を進めた。
庄屋は、その後ろ姿を見送った。
祐紀は青木村につくと馬屋に馬を預けた。
青木村で庄屋のことをすこし調べることにした。
青木村に着いたのは昼頃であったので、昼飯を食べながらの調査にする。
青木村は湖のある村で、民家が30軒ほどの街道沿いにあった。
旅籠は1軒だけ、飯屋も1軒だけという寒村だった。
ただ、街道沿いでもあり大きな宿場を避けたい人や、旅程の関係で先に進めなくなった旅人もいるので、商売としてはそれなりに繁盛しているように見える。
一件しかない飯屋に入ってみた。
テーブルが6つ程あり、人でごった返していた。
相席をお願いし、行商人と思われる人と一緒に座る。
店の者に、適当に食事を頼んだ。
相席の行商人は注文した食事が出てくるまで、暇をもてあましているのか話しかけてくる。
「貴方はどちらまで?」
「私は都までいきます。」
「それはまた、大変ですね。」
「ええ、まぁ・・。貴方は?」
「私は、この先の楓村 まで仕入れに行くんですよ。」
「そうですか・・、それにしても込んでますね、ここは。」
「ええ、何時もこんなもんですよ。」
「へ~・・、よく立ち寄るんですか?」
「そうですね、月1回は来てますね。」
「そうですか・・、この村、そんなに大きくないですよね。」
「まあ、30件くらいですから。」
「それに、見た限り貧富の差が見られないよい村のようですね。」
「ええ、庄屋のお陰で、この村は救われているんですよ。」
「ほう、それはまたどうして?」
「庄屋が村人に施しをしているからなんですよ、奇特な庄屋です。」
「へ~・・。」
「医者に貧乏でにかかれない人や、お米を買えない人に、利子もつけずにお金を貸したり、便宜をはかり、村人から神様みたいに崇め られているんです。」
「それは凄い。」
「でしょう。 でも、不思議なんですよね。」
「何がですか?」
「よくお金が続くなと。」
「え、でも庄屋ですからお金持ちでしょ?」
「まあ、そうなんですけどね・・」
「何かあるんですか?」
「ここだけの話しなんですが・・。」
「ええ・・。」
「あの庄屋、ここの村の者じゃないんですよ。」
「?」
「前の庄屋一家は強盗に襲われ一家皆殺しにされたんです。」
「では、親戚ですか?」
「いや、庄屋に親戚はいないんですよ。」
「?」
「なんでも、庄屋に昔しお世話になった者で、行商で財をなした人らしいんです。」
「ほう・・。」
「庄屋一家が皆殺しにされ、村が途方にくれていると、その行商人が現れ、庄屋への恩返しだと行って奉行所に届け出て、庄屋になったんですよ。」
「よく奉行所が届け出をきいて便宜をはからいましたね。」
「まあ、そりゃあ、この村はあまり裕福でなく庄屋をできる者もいないし、袖の下をだせば奉行所もね、まあ、なにより庄屋がいないのも困りますしね。」
「なるほどね。」
そう話していると、昼飯が二人の前に運ばれてきた。
二人は話しをやめ食事にする。
食べ終わると行商人は、そそくさと出て行ってしまった。
「庄屋が強盗で殺されて、お世話になった行商人が都合よく現れるね~・・。」
そう祐紀は呟き飯屋を出た。
馬小屋に手間賃を払い、都へと向う。
馬を飛ばして庄屋らしき男の手前で止ったり、追い越してから声をかけて怪しまれないためにも、ゆっくり進む必要があった。
それに男の足といえども、馬の並足よりは遅いので、ゆっくり行っても追いつけるはずだ。
馬に乗ること小一時間、目的の庄屋姿の男に追いついた。
庄屋姿の男は、馬の蹄の音に気がつくと、道を空けるために端に寄る。
祐紀は庄屋姿の男に近づくと暢気な声で挨拶をした。
「
庄屋姿の男は声をかけられるとは思わなかったのだろう、すこし驚いた
「今日は。」
「旅のお方でないのに、こんな峠道を歩いてどうされましたか?」
「え?」
普通に考えても、こんな峠道を通るとしたら、行商人か旅人くらいなものだろう。
祐紀でなくても尋ねるであろう。
「何かありましたか?」
「いや、そういうわけではないのですが、さるお方が峠に忘れ物をしたというので見に参ったのですよ。」
「そうですか、それは大変でしたね。
それにしても、こんな峠まで見に来られるなんて大変ですね。」
「いえ、これもお勤めのようなものなのですよ。」
「お勤めですか?」
祐紀は首を傾げて、不思議そうな顔をする。
「ええ、私はこの先の青木村の庄屋なんですよ。」
「ああ、どうりで着ている物が違いますね。」
「まあ、見苦しい格好もできませんしね。」
やはり庄屋であったか。
それに、どこの者か分かったことに満足をした。
「それにしても、忘れ物を探しにいくとは大変ですね。」
「ええ、まあ、さる身分の方からの依頼でしたので。」
「そうですか、捜し物は見つかったのですか?」
「いえ、見つからないので帰る途中なんですよ。」
「そうですか・・、もし良かったら送って行きますが。」
「いえいえ、それには及びません。すこし歩きたいので。」
「そうですか、ではお先に。」
そう言うと祐紀は、またユックリと馬を進めた。
庄屋は、その後ろ姿を見送った。
祐紀は青木村につくと馬屋に馬を預けた。
青木村で庄屋のことをすこし調べることにした。
青木村に着いたのは昼頃であったので、昼飯を食べながらの調査にする。
青木村は湖のある村で、民家が30軒ほどの街道沿いにあった。
旅籠は1軒だけ、飯屋も1軒だけという寒村だった。
ただ、街道沿いでもあり大きな宿場を避けたい人や、旅程の関係で先に進めなくなった旅人もいるので、商売としてはそれなりに繁盛しているように見える。
一件しかない飯屋に入ってみた。
テーブルが6つ程あり、人でごった返していた。
相席をお願いし、行商人と思われる人と一緒に座る。
店の者に、適当に食事を頼んだ。
相席の行商人は注文した食事が出てくるまで、暇をもてあましているのか話しかけてくる。
「貴方はどちらまで?」
「私は都までいきます。」
「それはまた、大変ですね。」
「ええ、まぁ・・。貴方は?」
「私は、この先の
「そうですか・・、それにしても込んでますね、ここは。」
「ええ、何時もこんなもんですよ。」
「へ~・・、よく立ち寄るんですか?」
「そうですね、月1回は来てますね。」
「そうですか・・、この村、そんなに大きくないですよね。」
「まあ、30件くらいですから。」
「それに、見た限り貧富の差が見られないよい村のようですね。」
「ええ、庄屋のお陰で、この村は救われているんですよ。」
「ほう、それはまたどうして?」
「庄屋が村人に施しをしているからなんですよ、奇特な庄屋です。」
「へ~・・。」
「医者に貧乏でにかかれない人や、お米を買えない人に、利子もつけずにお金を貸したり、便宜をはかり、村人から神様みたいに
「それは凄い。」
「でしょう。 でも、不思議なんですよね。」
「何がですか?」
「よくお金が続くなと。」
「え、でも庄屋ですからお金持ちでしょ?」
「まあ、そうなんですけどね・・」
「何かあるんですか?」
「ここだけの話しなんですが・・。」
「ええ・・。」
「あの庄屋、ここの村の者じゃないんですよ。」
「?」
「前の庄屋一家は強盗に襲われ一家皆殺しにされたんです。」
「では、親戚ですか?」
「いや、庄屋に親戚はいないんですよ。」
「?」
「なんでも、庄屋に昔しお世話になった者で、行商で財をなした人らしいんです。」
「ほう・・。」
「庄屋一家が皆殺しにされ、村が途方にくれていると、その行商人が現れ、庄屋への恩返しだと行って奉行所に届け出て、庄屋になったんですよ。」
「よく奉行所が届け出をきいて便宜をはからいましたね。」
「まあ、そりゃあ、この村はあまり裕福でなく庄屋をできる者もいないし、袖の下をだせば奉行所もね、まあ、なにより庄屋がいないのも困りますしね。」
「なるほどね。」
そう話していると、昼飯が二人の前に運ばれてきた。
二人は話しをやめ食事にする。
食べ終わると行商人は、そそくさと出て行ってしまった。
「庄屋が強盗で殺されて、お世話になった行商人が都合よく現れるね~・・。」
そう祐紀は呟き飯屋を出た。
馬小屋に手間賃を払い、都へと向う。