第41話 青木村の庄屋
文字数 2,334文字
緋の国の家老から指示が出たのは今から3ヶ月程前のことだった。
御家老は陰の国の侵略を決めたようだ。
ただ、まだ具体的にどう戦争の発端を切り開くか決めかねていた。
他国からの批判を躱 し、短期間で一気に攻め落としたいようだ。
儂としては陰の国が、見た目より簡単に領土にできるとは思えぬ。
あそこは確かに軍はさほど強くない。
力ずくなら簡単であろう。
しかし外交面は手強い。
寺社奉行が切れ者で、政策に関わっているという情報がある。
寺社奉行風情が政に首を突っ込むのか、と思ったが、どうも噂とはいいきれない。
陰の国は、一筋縄ではいかない気がする。
いずれにせよ儂が潜入すればわかることだ。
明日部下に指示を出すことにした。
================
陰の国に部下数名を先行させ拠点造りに着手した。
1週間後、ある峠道から外れた場所に、手頃な洞窟を発見したと知らせを受けた。
優秀な部下だ。
その洞窟を利用していたマタギがいたようだが、排除をしたようだ。
これで部下もマタギ姿で山に入ろうが、洞窟を使用しようが怪しまれないだろう。
これで拠点ができた。
===
陰の国の拠点に出向いた。
なかなか広くよい隠れ家だ。
陰の国の情報収集と攪乱 の準備を開始する。
===
青木村というよい場所を見つけた。
人口が少なく、噂の拡散を実験するにもよさそうだ。
庄屋は親戚もいないという。
なら、儂が庄屋になれば何かと都合がよい。
地方の庄屋ではあるが、この国の情報も役人から手に入れられるだろう。
もしかしたら、この庄屋には鷹狩りなどで、この国の殿や重鎮が訪れる可能性もある。
重役暗殺や、情報を聞き出せるかもしれない。
農民も困窮しており、庄屋になるのは金子 でなんとかできるだろう。
===
庄屋を排除した。
数日後に、行商人として計画を実行する。
===
農民に儂が庄屋に恩があるという話しを信じ込ませた。
あとは金子をばらまくだけだ。
===
農民への金子 が功を奏した。
農民から庄屋になるよう懇願される。
計画通りだ。
あとは役人の対応だけとなる。
===
この国の役人は、御 しやすい。
簡単に庄屋になる許可が与えられた。
このような役人だらけなら、この国を乗っ取るのは楽だろう。
別の村に別働隊を送る。
この村は役人がいないので、ならずものとして部下を活動させた。
村人は、あっさりと暴力に屈した。
我が国の農民とはちがい、平和ボケしている国は簡単だ。
だが、都に放った寺社奉行の監視役の間者と連絡がつかない。
おそらく排除されたのだろう・・。
なるほど、噂通りで隙を見せない男のようだ。
もしかして、間者の元締めかもしれぬ。
とりあえず寺社奉行には近づかない方がよさそうだ。
===
こちらに来て1ヶ月近く経 った。
そろそろ噂を広める実験でも始めるか。
部下に行商人になりすますように指示して噂をながさせた。
あらかじめどういう場所の誰に話すかは検討済みだ。
さて、どう噂が広がるか楽しみだ。
===
噂を広めて1ヶ月程経つ。
思った以上に噂が広がり、信じ始める民が出始めた。
成功だ。
この噂を広める方法は、これででよさそうに思える。
明日、峠の洞窟に主だった頭を集め確認と、今後の方針を立てる予定だ。
しかし、計画が順調すぎる。
平和ボケな国に感謝をしよう。
===
まさか峠で拉致対象の祐紀 と遭遇するとは思わなかった。
しかし彼奴 は何故 峠道を馬で来たのだろうか?
都に向かったようだが、この時期に例大祭 のようなものはなかったはずだ。
しかも峠道で彼奴 から話しかけてくるとは思わなんだ。
それにしても、のほほんとし警戒心のない若造だ。
皇帝が彼奴を欲しいと言っておったが、どうとでもできそうだ。
彼奴 に庄屋であることを明かして、知己となれたのは僥倖 だった。何か彼奴と接触するときに利用できるであろう。
それにしてもこの陰の国の民は扱いやすい。
この国の民をどう煽動すれば良いか悩んでいたが、何回かの模索で目処がたってしまった。
次は彼奴を拉致することも視野に入れるか・・・。
彼奴はこの国で知らん民はおらん。
どこに目撃者がおるかわからん。
つまり、この国で拉致したら足がつく可能性が高すぎる。
この国の中で拉致するのはまずいだろう。
緋の国の痕跡は残したくない。
そのような痕跡を残しての戦争は避けるべきであろう。
この国の軍が弱小なので戦争しても問題はないが、他国から緋の国が批判されるのは問題だ。
さて、では彼奴をどう対処するか・・。
他国で拉致をして我が国に亡命したと見せるか・・・。
これが一番他国が文句をいわんだろう。
それに拉致も楽であろうな・・。
しかし、彼奴が他国に行くことはなかろう。
戦争をして緋の国が勝てば、いやがうえでも祐紀は手に入る。
焦らんでもよいと思うが、皇帝が五月蠅いのが問題だ。
まあ、庄屋という形でこの国に拠点をもうけ、峠にもよい隠れ場所を見つけたことだ。
腰をすえて彼奴の拉致と、侵略をじっくり練るか・・。
このように庄屋は脳天気に考えていた。
そして重要な事を知らなかった。
まさか祐紀が、峠の山中で部下のマタギといるところを見られている事を。
そして峠で会ったその日に、自分を調べていた事を。
それがやがて自分にとって致命傷になることを知らず、祐紀を侮っていた。
御家老は陰の国の侵略を決めたようだ。
ただ、まだ具体的にどう戦争の発端を切り開くか決めかねていた。
他国からの批判を
儂としては陰の国が、見た目より簡単に領土にできるとは思えぬ。
あそこは確かに軍はさほど強くない。
力ずくなら簡単であろう。
しかし外交面は手強い。
寺社奉行が切れ者で、政策に関わっているという情報がある。
寺社奉行風情が政に首を突っ込むのか、と思ったが、どうも噂とはいいきれない。
陰の国は、一筋縄ではいかない気がする。
いずれにせよ儂が潜入すればわかることだ。
明日部下に指示を出すことにした。
================
陰の国に部下数名を先行させ拠点造りに着手した。
1週間後、ある峠道から外れた場所に、手頃な洞窟を発見したと知らせを受けた。
優秀な部下だ。
その洞窟を利用していたマタギがいたようだが、排除をしたようだ。
これで部下もマタギ姿で山に入ろうが、洞窟を使用しようが怪しまれないだろう。
これで拠点ができた。
===
陰の国の拠点に出向いた。
なかなか広くよい隠れ家だ。
陰の国の情報収集と
===
青木村というよい場所を見つけた。
人口が少なく、噂の拡散を実験するにもよさそうだ。
庄屋は親戚もいないという。
なら、儂が庄屋になれば何かと都合がよい。
地方の庄屋ではあるが、この国の情報も役人から手に入れられるだろう。
もしかしたら、この庄屋には鷹狩りなどで、この国の殿や重鎮が訪れる可能性もある。
重役暗殺や、情報を聞き出せるかもしれない。
農民も困窮しており、庄屋になるのは
===
庄屋を排除した。
数日後に、行商人として計画を実行する。
===
農民に儂が庄屋に恩があるという話しを信じ込ませた。
あとは金子をばらまくだけだ。
===
農民への
農民から庄屋になるよう懇願される。
計画通りだ。
あとは役人の対応だけとなる。
===
この国の役人は、
簡単に庄屋になる許可が与えられた。
このような役人だらけなら、この国を乗っ取るのは楽だろう。
別の村に別働隊を送る。
この村は役人がいないので、ならずものとして部下を活動させた。
村人は、あっさりと暴力に屈した。
我が国の農民とはちがい、平和ボケしている国は簡単だ。
だが、都に放った寺社奉行の監視役の間者と連絡がつかない。
おそらく排除されたのだろう・・。
なるほど、噂通りで隙を見せない男のようだ。
もしかして、間者の元締めかもしれぬ。
とりあえず寺社奉行には近づかない方がよさそうだ。
===
こちらに来て1ヶ月近く
そろそろ噂を広める実験でも始めるか。
部下に行商人になりすますように指示して噂をながさせた。
あらかじめどういう場所の誰に話すかは検討済みだ。
さて、どう噂が広がるか楽しみだ。
===
噂を広めて1ヶ月程経つ。
思った以上に噂が広がり、信じ始める民が出始めた。
成功だ。
この噂を広める方法は、これででよさそうに思える。
明日、峠の洞窟に主だった頭を集め確認と、今後の方針を立てる予定だ。
しかし、計画が順調すぎる。
平和ボケな国に感謝をしよう。
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まさか峠で拉致対象の
しかし
都に向かったようだが、この時期に
しかも峠道で
それにしても、のほほんとし警戒心のない若造だ。
皇帝が彼奴を欲しいと言っておったが、どうとでもできそうだ。
それにしてもこの陰の国の民は扱いやすい。
この国の民をどう煽動すれば良いか悩んでいたが、何回かの模索で目処がたってしまった。
次は彼奴を拉致することも視野に入れるか・・・。
彼奴はこの国で知らん民はおらん。
どこに目撃者がおるかわからん。
つまり、この国で拉致したら足がつく可能性が高すぎる。
この国の中で拉致するのはまずいだろう。
緋の国の痕跡は残したくない。
そのような痕跡を残しての戦争は避けるべきであろう。
この国の軍が弱小なので戦争しても問題はないが、他国から緋の国が批判されるのは問題だ。
さて、では彼奴をどう対処するか・・。
他国で拉致をして我が国に亡命したと見せるか・・・。
これが一番他国が文句をいわんだろう。
それに拉致も楽であろうな・・。
しかし、彼奴が他国に行くことはなかろう。
戦争をして緋の国が勝てば、いやがうえでも祐紀は手に入る。
焦らんでもよいと思うが、皇帝が五月蠅いのが問題だ。
まあ、庄屋という形でこの国に拠点をもうけ、峠にもよい隠れ場所を見つけたことだ。
腰をすえて彼奴の拉致と、侵略をじっくり練るか・・。
このように庄屋は脳天気に考えていた。
そして重要な事を知らなかった。
まさか祐紀が、峠の山中で部下のマタギといるところを見られている事を。
そして峠で会ったその日に、自分を調べていた事を。
それがやがて自分にとって致命傷になることを知らず、祐紀を侮っていた。