第101話 対峙 3
文字数 2,130文字
「そうか・・。
何を言っても無駄みたいだな。
だが、
それに犯罪を犯すかもしれないという噂さえ無い。
そんな俺達の組織を
今日の歓迎は挨拶程度だと思い知ることになるだろう。
お帰り願おう。」
馬頭から帰れと言われ、帝釈天は頭を右手で軽く
「帰れと言われてもな~・・。」
そう帝釈天が言うと、今度は
顔に笑みを浮かべて。
「帝釈天様といえども、言いがかりで来たなら・・。」
「ほう、言いがかりときたか。」
「そうだ、力ずくで追い返す。」
「おい、おい、それは穏やかではないな?」
「良く言う。
部下から歓迎を受け、逆に部下を可愛がってくれただろうが。」
そう言うと
それを見た帝釈天は、目を少し細めた。
「ほう・・、馬頭も神力を使うか。」
「神力? なんだそれは?」
「?・・・、知らんのか?」
「聞いたこともない。」
この言葉に帝釈天はポカンとした。
その様子に
「本当に神力というのを知らんのか?」
「ああ、聞いたこともない。」
「
「ああ・・知らない。」
帝釈天は二人を交互に見る。
嘘を言っているようには見えない。
帝釈天は
「お前がソファから立ったとき、俺に神力を向けたのだが。」
「神力? いや、違う。」
「?」
「俺は殺気を
「殺気だと?」
「ああ、そうだ。」
「あのな、殺気と神力は違うぞ?」
「いや、俺は殺気を放ったのだ。
帝釈天様、貴方を叩きのめすと決め、殺意を向けたのだ。」
その言葉に帝釈天は目をしばたたかせた。
そして
「ふむ・・無意識に神力を出したか。」
この独り言に
「何を分からん事を言っている。」
だが、帝釈天はこの言葉を無視し、質問をした。
「聞きたいことがある。
お前が今まで殺気を放つと、
「ああ、そうだ。 俺は強いからな。」
この質問で帝釈天に分かったことがある。
帝釈天は最初、
だが、この様子だとそうではないようだ。
おそらく威圧する時、危険を察知したとき、そして戦闘時に無意識に神力を発揮するのだろう。
それも誰に教わることも無く、神力を無意識で使用しているようだ。
そう思う帝釈天も、その一人ではあるのだが。
帝釈天は、
「お前の両親はどうした?」
「両親だと?」
「ああ、そうだ。」
「両親などおらん。 おれは
「孤児?」
「そうだ。
物心ついたときは
それ以前については記憶がない。
おそらく捨てられたのだろう。」
「何歳からの記憶だ?」
「三歳くらいからの記憶だ。」
「三歳でどうやって食い物とか得ていたんだ?」
「知らない
それが何だって言うんだ!」
馬頭は帝釈天からわけの分からない質問をされ
「まあ、落ち着け。
地獄という場所で三歳くらいの幼児が無事に育ったんだ。
それも偶然に施しをしてくれた大人が居てな。」
「それがどうした?」
「施した大人達を覚えているか?」
「え? ああ、おぼろげにな。」
「その大人はどうした。」
「突然にいなくなった。」
「ほう・・・
「俺達が自分達で食い物を得られるようになった頃だ。」
「ふむ・・。」
そこで帝釈天は押し黙る。
何かを考え始めたようだ。
そして、また
「お前の周りで同じ
「え?」
「だから同じ歳の子がいたのか?」
「・・・いない。」
「いなかったのだな?」
「ああ、周りには子供などいなかった。」
「やはりな・・・。」
「?」
帝釈天は一人
そんな帝釈天が話しは終わりとばかりに牛頭馬頭の二人に言う。
「俺の質問の意味がわからなければ気にするな。」
「いったい何だっていうんだ! わけの分からん質問をしやがって!」
帝釈天はそれには答えなかった。
そして不適な笑みを浮かべたのだった。