第45話1 気配を察して目が覚める

文字数 740文字

 気配を察して目が覚める。

 ぼんやりしていた意識が急速に覚醒していく。

ん、んん……翠寿?
 奥の襖を開けた翠寿がこちらを覗いていた。
おはよーございます。

キヨマサさまはちゃんとおきられてすごいです!

 上体を起こす。

 何か夢を見ていた気がするけど目が覚めたら忘れてしまった。

昔から目覚めはいい方なんだ
ミオさまもキヨマサさまみたいだったらいいのになって思います
澪は朝弱いんだ
はい。

だからコウおねーちゃんが毎日くろーしてます!

 お酒に弱くて朝に弱くて……澪は弱点ばかりお持ちのようだ。

 制服に着替え終えた頃を見計らっていたのか葵も奥から姿を見せる。

おはようございます、主様。

今日はいかがいたしますか

乗馬の練習でもしてみようかと思ってるんだ

 この世界では武士は馬に乗れて当たり前。機巧操士を名乗っているのに馬に乗れないでは恥ずかしいことこの上ない。

 おそらく武士が馬に乗れるのは、現実世界なら普通免許を持っているのと同じレベルではないかと考えられる。

 それに移動手段が限られるだろうこの世界において馬に乗れると何かと便利ではないかと考えたのだ。

澪の領地は馬を育てているそうだし、教えてもらおうかなと
ミオさまはおうまさんにのるのがじょーずですよ。

だっておうまさんのかんがえてることがわかるから!

 そこは間違いなく澪の強みだ。

 〈友愛の声〉って言ってたっけ。僕もそういう技能を身に付けられたらいいんだけど。そっちも教えてもらえば習得できたりしないのだろうか。

翠寿はお馬さんが考えてることってわかる?
うーん、わかるような、わからないような……

 言いながら体が傾いていく。

 そしてそのままこてんと転がった。

やっぱりわからないです!
そっかー
 朝から可愛らしい翠寿の姿に和んでいたら、何やら視線を感じた。
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登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

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