第43話3

文字数 680文字

いや、ごめん。なんでもない。

でもそれって不動だけじゃないんだろ

全員が同じ結果だったよ。

でも悔しいじゃないか。俺は戦いたいんだ。

男として、武士として。この国を守りたいっ

 不動が水面を叩く。

 ばしゃんと大きな水音がした。


 この世界ではゲームのように主人公だからとどんな機巧姫ともパートナーになれるわけではない。

 だから今は茅葺さんの研究が上手くいくのを祈るしかないだろう。

 あとは機巧姫との出会いの回数を増やすぐらいしか手が浮かばない。

 所謂、ガチャを回し続ければ手に入る理論だ。

他の機巧姫と会ってないの?
そうそう会える機会なんてないし……

 それもそうか。

 実際、城下町で見かける人形はどれも人形雛だった。

 機巧姫は高価なものだから、よほど裕福な人でなければ手に入れられないものだし仕方がない。

人形を扱ってるお店になら機巧姫も置いてあるんじゃないの。

そこに行けばいいじゃないか

もし俺を受け入れてくれる機巧姫が店で売っていたとしても金がない。

機巧姫がものすごく高いのは兄貴も知ってるだろ

先のことを心配しても仕方ないよ。

まず会ってみよう。上手くいってからお金について心配すればいいって

 いざとなれば藤川様に資金援助を求めるのもありだろう。

 むしろ積極的に出会いの機会を増やせるように掛け合ってみるべきか。

 この件については広幡館長を通じて提案するのがいいな。

……悪い。

愚痴をこぼした

気にするなって。そういうのはあまりため込まない方がいいよ。

それにこの先、僕が不動に愚痴をこぼすかもしれないしさ

俺なんかでよければいくらでも話してくれよ
 そういうのが友達ってやつだもんな。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

不吹清正(ふぶき・きよまさ)

本作の主人公で元の世界ではゲームクリエイターをしていたが、自分の作ったゲームによく似た世界へ微妙に若返りつつ転移してしまう。

好奇心旺盛な性格で行動より思考を優先するタイプ。

連れ合いの機巧姫は葵の君。

葵の君(あおいのきみ)

主人公の連れ合い(パートナー)である機巧姫。髪の色が銘と同じ葵色で胸の真ん中に同色の勾玉が埋め込まれている。

人形としては最上位の存在で、外見や行動など、ほとんど人間と変わりがない。

主人公のことを第一に考え、そのために行動をする。

淡渕澪(あわぶち・みお)

関谷国の藤川家に仕える知行三百石持ちの侍で操心館に所属する候補生の一人。水縹の君を所有しているが連れ合いとして認められてはいない。

人とは異なる八岐と呼ばれる種族の一つ、木霊に連なっており、癒しの術を得意とする。また動物や植物ともある程度の意思疎通ができる。

大平不動(おおひら・ふどう)

操心館に所属する候補生の一人で八岐の鬼の一族に連なる。

八岐の中でも鬼は特に身体能力に優れており、戦うことを至上の喜びとしている。不動にもその傾向があり、強くなるために自己研鑽を怠らない。

直情的で考えるより先に体が動くタイプで、自分より強いと認めた相手に敬意を払う素直さを持つ。

紅寿(こうじゅ)

澪に仕える忍びで、八岐に連なる人狼の少女。オオカミによく似たケモノ耳と尻尾を有している。

人狼の身体能力は鬼と並ぶほど高く、その中でも敏捷性は特に優れている。忍びとしても有能。

現在は言葉を話せないもよう。

翠寿(すいじゅ)

澪に仕える忍びで、紅寿の妹。人狼特有のケモノ耳と尻尾を有する。

幼いながらも誰かに仕えて職務を果たしたいという心根を持つがいろいろと未熟。

ビューワー設定

背景色
  • 生成り
  • 水色